説明

DNA座におけるメチル化密度の定量的測定の方法

本発明は、DNA断片の集団内において対象となる座の平均DNAメチル化密度を測定する新規の方法である。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本願は、2004年4月12日に出願された米国仮特許出願第60/561,721号、2004年4月12日に出願された米国仮特許出願第60/561,563号、および2003年10月21日に出願された米国仮特許出願第60/513,426号の優先権の恩典を主張し、それぞれは、すべての目的のために全体として参照により組み入れられている。
【0002】
発明の背景
ヒト癌細胞は、典型的には、重要な遺伝子の突然変異、増幅または欠失により特徴付けられる体細胞性に変化したゲノムを含む。さらに、ヒト癌細胞由来のDNA鋳型は、しばしば、DNAメチル化における体細胞性変化を示す。例えば、E.R. Fearon, et al., Cell 61:759 (1990): P.A. Jones, et al., Cancer Res. 46:461 (1986): R. Holliday, Science 238:163 (1987); A. De Bustros, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5693 (1988); P.A. Jones, et al., Adv. Cancer Res. 54:1 (1990); S.B. Baylin, et al., Cancer Cells 3:383 (1991); M. Makos, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1929 (1992); N. Ohtani-Fujita, et al., Oncogene 8:1063 (1993)を参照されたい。
【0003】
DNAメチラーゼは、メチル基を普遍的なメチル供与体S-アデノシルメチオニンからDNA上の特定の部位へ転移させる。いくつかの生物学的機能は、DNAにおけるメチル化塩基に起因している。最も確立された生物学的機能は、同族の制限酵素による消化からのDNAの保護である。この制限修飾現象は、これまでは、細菌においてのみ観察されていた。
【0004】
しかしながら、哺乳動物細胞は、グアニンの5'側に隣接しているDNAにおけるシトシン残基(CpG)をもっぱらメチル化する異なるメチラーゼを有する。このメチル化は、遺伝子活性、細胞分化、腫瘍形成、X染色体不活性化、ゲノミックインプリンティングおよび他の主要な生物学的過程において役割を果たすことがいくつかの方向の証拠により示された(Razin, A.H. and Riggs, R.D. eds., DNA Methylation Biochemistry and Biological Significance, Springer-Verlag, N.Y., 1984)。
【0005】
真核細胞において、グアノシンの5'側すぐにあるシトシン残基のメチル化は、主にCGの乏しい座で起こる(Bird, A., Nature 321:209 (1986))。対照的に、CpGアイランドと呼ばれるCGジヌクレオチドの離散的領域は、5'制御領域のメチル化が転写抑制へ導きうる、X染色体不活性化および親特異的インプリンティング(Li, et al., Nature 366:362 (1993))中を除いて、正常細胞においてメチル化されない状態のままである。例えば、Rb遺伝子の新規のメチル化が、網膜芽細胞腫の小画分において実証され(Sakai, et al., Am. J. Hum. Genet., 48:880 (1991))、VHL遺伝子のより詳細な分析は、散発性腎細胞癌のサブセットにおいて異常型メチル化を示した(Herman, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 91:9700 (1994))。腫瘍抑制遺伝子の発現もまた、正常にはメチル化されていない5'CpGアイランドの新規のDNAメチル化により無効にされうる。例えば、Issa, et al., Nature Genet. 7:536 (1994); Merlo, et al., Nature Med. 1:686 (1995); Herman, et al., Cancer Res., 56:722 (1996); Graff, et al., Cancer Res., 55:5195 (1995); Herman, et al., Cancer Res. 55:4525 (1995)を参照されたい。
【0006】
腫瘍形成における最も初期の遺伝的変化の同定は、分子癌研究における主要な焦点である。これらの変化の同定に基づいた診断的アプローチは、早期発見ストラテジー、腫瘍の段階分け、および、より効果的な癌処置へと導くこれらの早期変化を標的とする新規の治療アプローチの実行を可能にすることができる。
【発明の開示】
【0007】
発明の簡単な概要
本発明は、ゲノムDNAの集団内の標的配列における平均メチル化密度を定量化するための方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、ゲノムDNAをメチル化依存性制限酵素またはメチル化感受性制限酵素と、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で、接触させる段階;座の無傷コピーを定量化する段階;および増幅産物の量を対照DNAのメチル化の量を表す対照値と比較し、それにより、対照DNAのメチル化密度と比較した座における平均メチル化密度を定量化する段階を含む。
【0008】
いくつかの態様において、定量化段階は、定量的増幅を含む。いくつかの態様において、増幅産物の量は標準曲線と比較される。
【0009】
いくつかの態様において、定量化段階は、ハイブリッド捕獲での座の無傷コピーの直接的検出を含む。
【0010】
いくつかの態様において、増幅段階は、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、プライマー間のゲノムDNAの切断されていない座に対応する増幅産物を産生するように、座に隣接するDNAにハイブリダイズする段階を含む。
【0011】
いくつかの態様において、対照値は、メチル化ヌクレオチドの既知または予想される数を有するDNA試料の増幅産物の量を表す。
【0012】
いくつかの態様において、制限酵素はメチル化感受性制限酵素である。いくつかの態様において、メチル化感受性制限酵素は、Aat II、Aci I、Acl I、Age I、Alu I、Asc I、Ase I、AsiS I、Bbe I、BsaA I、BsaH I、BsiE I、BsiW I、BsrF I、BssH II、BssK I、BstB I、BstN I、BstU I、Cla I、Eae I、Eag I、Fau I、Fse I、Hha I、HinP1 I、HinC II、Hpa II、Hpy99 I、HpyCH4 IV、Kas I、Mlu I、MapA1 I、Msp I、Nae I、Nar I、Not I、Pml I、Pst I、Pvu I、Rsr II、Sac II、Sap I、Sau3A I、Sfl I、Sfo I、SgrA I、Sma I、SnaB I、Tsc I、Xma IおよびZra Iからなる群より選択される。
【0013】
いくつかの態様において、制限酵素は、メチル化依存性制限酵素である。いくつかの態様において、制限酵素は、メチル-シトシン依存性制限酵素である。いくつかの態様において、制限酵素は、McrBCである。いくつかの態様において、制限酵素は、メチル-アデノシン依存性制限酵素である。いくつかの態様において、制限酵素はDpn Iである。
【0014】
いくつかの態様において、メチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素は、部分の部分的消化のみを可能にする条件下で部分と接触させられる。
【0015】
いくつかの態様において、方法は、ゲノムDNAを少なくとも2つの等しい部分へ分割する段階;一つの部分をメチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素と接触させ、かつ第二部分をその制限酵素のアイソシゾマーのパートナーと接触させる段階;2つのオリゴヌクレオチドプライマーをその座に隣接するDNAにハイブリダイズさせることを含む段階において各部分におけるゲノムDNAの座を増幅する段階;増幅産物を定量化する段階;および、2つの部分からの増幅産物の量を比較する段階を含む。
【0016】
いくつかの態様において、方法は、ゲノムDNAを、増幅段階の前に非メチル化シトシンを修飾する作用物質と接触させる段階をさらに含み、2つのオリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つは、ゲノムDNAにおいて修飾された非メチル化とメチル化のDNAの間を識別する。
【0017】
いくつかの態様において、方法は、ゲノムDNAが非メチル化シトシンを修飾する作用物質と接触させられる前に、少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素またはメチル化依存性制限酵素とDNAを接触させる段階をさらに含む。いくつかの態様において、ゲノムDNAは、少なくとも2つの異なるメチル化依存性またはメチル化感受性制限酵素の混合物と接触させられる。
【0018】
いくつかの態様において、作用物質は、亜硫酸水素ナトリウムである。
【0019】
いくつかの態様において、増幅産物は、定量的PCRを用いて定量化される。
【0020】
いくつかの態様において、対照値は、対照座を含むDNAをメチル化依存性またはメチル化感受性制限酵素と接触させる段階;対照座を増幅する段階;および、増幅産物の量を測定する段階により作成される。いくつかの態様において、対照座は、メチル化されていないことが既知であるまたは予想される。
【0021】
いくつかの態様において、対照値は、メチル化ヌクレオチドの既知の数を含む。いくつかの態様において、ゲノムDNAはヒト由来である。いくつかの態様において、方法は、対象において癌細胞の有無を検出するために行われる。
【0022】
いくつかの態様において、定量化段階は、増幅産物にハイブリダイズするプローブを検出することを含む。いくつかの態様において、プローブは検出可能な蛍光部分を含む。
【0023】
いくつかの態様において、定量化段階は、ハイブリッド捕獲での座の無傷コピーの直接的検出を含む。
【0024】
いくつかの態様において、DNAは動物由来である。いくつかの態様において、動物はヒトである。
【0025】
いくつかの態様において、ゲノムDNAは、脳組織、結腸組織、尿生殖器組織、肺組織、腎組織、造血組織、乳房組織、胸腺組織、睾丸組織、卵巣組織、子宮組織、および血液からなる群より選択される組織由来である。
【0026】
いくつかの態様において、ゲノムDNAは、植物、真菌および細菌からなる群より選択される生物体由来である。
【0027】
本発明はまた、DNA試料において標的座についての相対的メチル化密度を計算する方法を提供する。いくつかの態様において、方法は以下の段階を含む:
i. DNA試料をメチル化依存性制限酵素と、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で接触させて、座の少なくとも一部のメチル化コピーが断片化されている核酸の集団を得る段階、またはDNA試料をメチル化感受性制限酵素と、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で接触させて、座の少なくとも一部の非メチル化コピーが断片化されている核酸の集団を得る段階;
ii. ハイブリッド捕獲を用いてDNAにおいて座の無傷コピーの数を定量化する段階;および
iii. 試料の部分のハイブリッド捕獲シグナルを、試料の異なる部分のハイブリッド捕獲シグナルと、または対照値(本明細書に記載されているような)と比較することにより座についての相対的メチル化密度を決定する段階。
【0028】
本発明はまた、DNA試料において標的座についての相対的メチル化密度を計算する方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、以下の段階を含む:
i. DNA試料をメチル化依存性制限酵素と、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で接触させて、座の少なくとも一部のメチル化コピーが断片化されている核酸の集団を得る段階、またはDNA試料をメチル化感受性制限酵素と、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で接触させて、座の少なくとも一部の非メチル化コピーが断片化されている核酸の集団を得る段階;
ii. 接触段階後、DNA試料において座の無傷コピーを定量的に増幅する段階;
iii. DNA試料からの増幅された部分についてサイクル閾値(Ct)を同定する段階;および
iv. DNA試料のCtと対照Ct値の間の差(ΔCt)を計算することにより標的座についての相対的メチル化密度を決定する段階であって、2|ΔCt|が、DNA試料と対照の間の相対的メチル化密度に等しい、または、比例する、段階。
【0029】
いくつかの態様において、対照Ctは、以下の段階を含む段階により計算される:
i. 対照DNA試料をメチル化依存性制限酵素と、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で接触させて、座の少なくとも一部のメチル化コピーが断片化されている核酸の集団を得る段階、または対照DNA試料をメチル化感受性制限酵素と、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で接触させて、座の少なくとも一部の非メチル化コピーが断片化されている核酸の集団を得る段階;
ii. 接触段階後、対照DNA試料において座の無傷コピーを増幅する段階;および
iii. 対照DNA試料からの増幅された部分についてサイクル閾値(Ct)を同定する段階。
【0030】
いくつかの態様において、増幅段階は、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを座に隣接するDNAに、プライマー間のゲノムDNAの切断されていない座に対応する増幅産物を産生するように、ハイブリダイズさせる段階を含む。いくつかの態様において、制限酵素は、メチル化感受性制限酵素である。いくつかの態様において、メチル化感受性制限酵素は、Aat II、Aci I、Acl I、Age I、Alu I、Asc I、Ase I、AsiS I、Bbe I、BsaA I、BsaH I、BsiE I、BsiW I、BsrF I、BssH II、BssK I、BstB I、BstN I、BstU I、Cla I、Eae I、Eag I、Fau I、Fse I、Hha I、HinP1 I、HinC II、Hpa II、Hpy99 I、HpyCH4 IV、Kas I、Mlu I、MapA1 I、Msp I、Nae I、Nar I、Not I、Pml I、Pst I、Pvu I、Rsr II、Sac II、Sap I、Sau3A I、Sfl I、Sfo I、SgrA I、Sma I、SnaB I、Tsc I、Xma IおよびZra Iからなる群より選択される。
【0031】
いくつかの態様において、メチル化感受性制限酵素は、認識配列内のアデノシンがN6位においてメチル化されている場合、切断しない。いくつかの態様において、メチル化感受性制限酵素は、Mbo Iである。
【0032】
いくつかの態様において、制限酵素は、メチル化依存性制限酵素である。いくつかの態様において、制限酵素は、メチル-シトシン依存性制限酵素である。いくつかの態様において、制限酵素は、McrBC、McrA、およびMrrAである。いくつかの態様において、制限酵素は、メチル-アデノシン依存性制限酵素である。いくつかの態様において、制限酵素はDpn Iである。
【0033】
いくつかの態様において、メチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素は、部分と、部分の部分的消化のみを可能にする条件下で接触させられる。
【0034】
本発明はまた、ゲノムDNAの座における平均メチル化密度を定量化するためのキットを提供する。いくつかの態様において、キットは、メチル化依存性制限酵素またはメチル化感受性制限酵素;あらかじめ決められた数のメチル化ヌクレオチドを含む対照DNA分子;および対照DNA分子にハイブリダイズする対照オリゴヌクレオチドプライマーを含む。
【0035】
いくつかの態様において、制限酵素は、メチル化感受性制限酵素である。いくつかの態様において、制限酵素は、メチル化依存性制限酵素である。いくつかの態様において、制限酵素は、メチル-シトシン依存性制限酵素である。いくつかの態様において、制限酵素はMcrBCである。
【0036】
いくつかの態様において、キットはさらに、ヒトゲノムDNAのあらかじめ決められた座にハイブリダイズする標的オリゴヌクレオチドプライマーを含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの標的オリゴヌクレオチドプライマーは、ヒトゲノムDNAにおいて修飾された非メチル化とメチル化のDNAの間を識別する。いくつかの態様において、キットは、異なるあらかじめ決められた数のメチル化ヌクレオチドを含む複数のDNA分子を含む。いくつかの態様において、キットはさらに、制限酵素の活性を維持するのに十分な試薬を含む。いくつかの態様において、キットはさらに、耐熱性DNAポリメラーゼを含む。いくつかの態様において、キットはさらに、非メチル化シトシンを修飾する作用物質を含む。いくつかの態様において、キットはさらに、検出可能に標識されたオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、キットはハイブリッド捕獲試薬を含む。
【0037】
定義
DNAの「断片」とは、染色体全体またはそのより小さな区域でありうる、可変長の無傷DNA分子を指す。
【0038】
「メチル化」とは、シトシンのC5位もしくはN4位、アデノシンのN6位におけるメチル化、または核酸メチル化の他の型を指す。
【0039】
「メチル化依存性制限酵素」は、メチル化認識配列において、または、の近くで、切断するが、認識配列がメチル化されていない場合、同じ配列において、または、の近くで、切断しない、制限酵素を指す。メチル化依存性制限酵素は、例えばメチル化シトシンまたはメチル化アデノシンを含む特定の配列を認識できる。メチル化依存性制限酵素は、メチル化認識配列において切断するもの(例えば、Dpn I)、および認識配列においてではない配列において切断する酵素(例えば、McrBC)を含む。例えば、McrBCは、2つのハーフサイトを必要とする。各ハーフサイトは、続いて5-メチルシトシンがあるプリン(R5mC)でなければならず、2つのハーフサイトは、お互いに20塩基対より離れている必要があり、かつ4000塩基対よりは接近している必要がある(N20〜4000)。McrBCは、一般的に、一方のハーフサイトまたは他方の近くを切断するが、切断位置は、典型的には、メチル化塩基から約32塩基対の数個の塩基対に渡って分布する。例示的なメチル化依存性制限酵素は、例えば、McrBC(例えば、米国特許第5,405,760号参照)、McrA、MrrAおよびDpn Iを含む。当業者は、本明細書に記載された制限酵素の相同体および相同分子種もまた、本発明で用いるのに適していることを理解しているものと思われる。
【0040】
「メチル化非感受性制限酵素」とは、認識配列における、または、認識配列の近くの、対象となる塩基(AまたはC)のメチル化状態にかかわらずDNAを切断する制限酵素を指す。
【0041】
「メチル化を感知する制限酵素」とは、それの認識配列のメチル化に応答して活性が変化する制限酵素を指す。
【0042】
「メチル化感受性制限酵素」とは、非メチル化認識配列において、または、の近くで、切断するが、認識配列がメチル化されている場合、その同じ配列において、または、の近くで切断しない、制限酵素(例えば、Pst I)を指す。例示的な5'-メチルシトシン感受性制限酵素は、例えば、Aat II、Aci I、Acl I、Age I、Alu I、Asc I、Ase I、AsiS I、Bbe I、BsaA I、BsaH I、BsiE I、BsiW I、BsrF I、BssH II、BssK I、BstB I、BstN I、BstU I、Cla I、Eae I、Eag I、Fau I、Fse I、Hha I、HinP1 I、HinC II、Hpa II、Hpy99 I、HpyCH4 IV、Kas I、Mlu I、MapA1 I、Msp I、Nae I、Nar I、Not I、Pml I、Pst I、Pvu I、Rsr II、Sac II、Sap I、Sau3A I、Sfl I、Sfo I、SgrA I、Sma I、SnaB I、Tsc I、Xma IまたはZra Iを含む。例えば、McClelland, M. et al., Nucleic Acids Res. 22(17):3640-59 (1994)およびhttp://rebase.neb.comを参照されたい。例示的なメチルアデノシン感受性制限酵素は、例えば、Mbo Iを含む。
【0043】
本明細書に用いられる場合、「認識配列」は、一次核酸配列のみを指し、配列のメチル化状態を反映しない。
【0044】
「メチル化密度」とは、DNAの与えられた座におけるメチル化残基の数を、メチル化されることができる同じDNA配列におけるヌクレオチドの総数で割ったものを指す。メチル化密度は、メチル化シトシンまたはメチル化アデノシンについて測定されうる。
【0045】
「座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下において」DNAを切断することとは、結果として、可能性のある制限酵素切断部位を含むDNAの少なくとも一部が切断されない状態のままであることを生じる、反応条件、制限酵素および酵素濃度および/またはDNAの任意の組み合わせを指す。例えば、DNAの部分的消化(例えば、酵素の量または消化時間の量を制限することによる)は、座におけるいくつかの可能性のある制限酵素切断部位が切断されない状態のままであることを可能にする。または、McrBCのような制限酵素を用いる完全消化は、結果として、座におけるいくつかの可能性のある制限酵素切断部位が切断されない状態のままであることを生じるが、なぜなら、その酵素が2つの認識ハーフサイトの間を常に切断するとは限らず、それにより、座がその2つの認識ハーフサイトにより限定されている配列の集団において座の少なくともいくつかの切断されていないコピーを残すためである。「可能性のある制限酵素切断部位」とは、切断部位と同じである場合も異なる場合もありうる、酵素認識配列を認識する場合、制限酵素が切断することができる配列(すなわち、適切なヌクレオチド配列およびメチル化状態を含む)を指す。
【0046】
DNAを「増幅すること」とは、結果として、鋳型核酸配列のコピー数の増加を生じる、任意の、酵素的を含む化学的反応を指す。増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびリガーゼ連鎖反応(LCR)(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号;PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis et al, eds., 1990))、鎖置換増幅(SDA)(Walker, et al. Nucleic Acids Res. 20(7):1691-6 (1992); Walker PCR Methods Appl 3(1):1-6 (1993))、転写媒介型増幅(Phyffer, et al., J. Clin. Microbiol. 34:834-841 (1996); Vuorinen, et al., J. Clin. Microbiol. 33:1856-1859 (1995))、核酸配列に基づいた増幅(NASBA)(Compton, Nature 350(6313):91-2 (1991))、ローリングサークル増幅(RCA)(Lisby, Mol. Biotechnol. 12(1):75-99 (1999); Hatch et al., Genet. Anal. 15(2):35-40 (1999));分枝DNAシグナル増幅(bDNA)(例えば、Iqbal et al., Mol. Cell Probes 13(4):315-320 (1999)参照);ならびに線形増幅を含む。
【0047】
本明細書に用いられる場合の「DNAの部分的消化」とは、制限酵素が、DNAにおけるその特定の制限酵素についての可能性のある切断部位の一部(例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%未満)であるが、全部ではない部位を切断するような適切な反応条件下で制限酵素とDNAを接触させることを指す。配列の部分的消化は、例えば、完全消化を達成するのに必要である時間より短い時間、活性制限酵素とDNAを接触させ、その後、反応を終結させることにより、または部分的消化の所望の量を可能にする他の変更した反応条件下において、達成されうる。「可能性のある部位」とは、一般的に、酵素認識配列であるが、酵素が認識配列以外の配列で切断する状況(例えば、McrBC)も含む。
【0048】
本明細書に用いられる場合のDNAの「完全消化」とは、特定の制限酵素についての制限酵素認識配列の少なくとも95%、および典型的には少なくとも99%、または全部の切断を可能にしうる、十分な時間および適切な条件下においてDNAを制限酵素に接触させることを指す。完全消化に必要な、時間、緩衝液および他の試薬を含む条件は、典型的には、制限酵素の製造会社により提供される。当業者は、DNA試料の品質が完全消化を妨げうることを認識しているものと思われる。
【0049】
「アイソシゾマー」とは、同じヌクレオチド配列を認識する制限酵素を指す。この定義において用いられる場合、「同じヌクレオチド配列」は、メチル化配列と非メチル化配列の間を区別することを意図されない。従って、メチル化依存性またはメチル化感受性制限酵素の「アイソシゾマーのパートナー」は、認識配列がメチル化されているかどうかにかかわらず、メチル化依存性またはメチル化感受性制限酵素と同じ認識配列を認識する制限酵素である。
【0050】
「非メチル化シトシンを修飾する作用物質」とは、非メチル化シトシンの化学組成を変化させるが、メチル化シトシンの化学組成を変化させない任意の作用物質を指す。そのような作用物質の例は、亜硫酸水素ナトリウムである。
【0051】
「メチル化DNAと非メチル化DNAの間を識別するプライマー」とは、以下であるオリゴヌクレオチドを指す:
(i)亜硫酸水素塩変換後、メチル化DNA配列を表す配列にハイブリダイズするが、亜硫酸水素塩変換後、同一の非メチル化配列を表す配列にハイブリダイズしない;または
(ii)亜硫酸水素塩変換後、非メチル化DNA配列を表す配列にハイブリダイズするが、亜硫酸水素塩変換後、同一のメチル化配列を表す配列にハイブリダイズしない。
【0052】
本明細書に記載されているように、メチル化配列と非メチル化配列の間を識別するプライマーは、一般的に、DNAが、非メチル化ヌクレオチドを修飾するが、メチル化ヌクレオチドを修飾しない、または逆もまた同様である、作用物質(亜硫酸水素ナトリウム)で処理されたならば、生じるであろう配列にハイブリダイズするように設計される。例えば、亜硫酸水素ナトリウムがDNAと接触させられた場合、非メチル化シトシンはウラシルへ変換され、一方、メチル化シトシンは修飾されない。ウラシルはアデニンと相補体を形成するため、非メチル化配列に結合するプライマーは、アデニンが修飾されたシトシン(すなわち、ウラシル)との相補体を形成するであろう位置にアデニンを含む。同様に、メチル化シトシンを含む配列にハイブリダイズするプライマーが望まれる場合には、プライマーは、メチル化シトシンと相補体を形成するであろうところにグアノシンを含む。従って、メチル化または非メチル化DNAを「表す」配列は、DNAの亜硫酸水素ナトリウム処理の結果生じるDNAを含む。
【0053】
本明細書に用いられる場合の「座」とは、核酸の集団(例えば、ゲノム)内の標的配列を指す。標的配列の一コピーがゲノムに存在する場合には、「座」は、単一の座を指す。標的配列の複数のコピーがゲノムに存在する場合には、「座」は、ゲノムにおける標的配列を含むすべての座を指す。
【0054】
発明の詳細な説明
I. 序論
本発明は、ゲノムDNAの領域においてメチル化の存在およびメチル化密度を測定するための迅速かつ効率的な方法を提供する。メチル化密度における変化の測定は、様々な癌を含む様々な疾患についての診断および予後を提供するために有用でありうる。本発明の方法はまた、特定のメチル化事象の検出を提供するが、本発明の方法は、それらが、特定のヌクレオチドのメチル化状態が表現型を決定するという予想または期待により限定されないため、特に注目に値する。特定のメチル化ヌクレオチドの有無よりむしろ、メチル化の密度(すなわち、核酸配列の特定の長さにおいてメチル化されているヌクレオチドの量)が遺伝子発現を調節する、および座のメチル化密度が連続体に沿った疾患進行を反映している場合において、本方法は特に役に立つ。
【0055】
II. ゲノムDNAにおけるメチル化の相対的量の定量化
DNAの座のメチル化の量は、座を含むゲノムDNAの試料を供給する段階、DNAを、メチル化感受性またはメチル化依存性のいずれかである制限酵素で切断する段階、およびその後、無傷DNAの量を定量化する段階、または対象となるDNA座における切断されたDNAの量を定量化する段階により測定されうる。無傷または切断されたDNAの量は、座を含むゲノムDNAの最初の量、座におけるメチル化の量、およびゲノムDNAにおいてメチル化されている座におけるヌクレオチドの数(すなわち、割合)に依存する。DNA座におけるメチル化の量は、無傷DNAまたは切断されたDNAの量を、同様に処理されたDNA試料において無傷DNAまたは切断されたDNAの量を表す対照値と比較することにより決定されうる。下で考察されているように、対照値は、メチル化ヌクレオチドの既知または予想される数を表すことができる。または、対照値は、もう一つの細胞(例えば、正常な、非罹患性)における同じ座もしくは第二の座からの無傷または切断されたDNAの量を表すことができる。
【0056】
下に詳細に考察されているように、少なくとも1つのメチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素を、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で用い、その後、残っている無傷コピーを定量化し、その量を対照と比較することにより、座の平均メチル化密度が決定されうる。メチル化感受性制限酵素が、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下でDNA座のコピーと接触させられたならば、残っている無傷DNAは、メチル化密度に正比例し、それに従って、試料における座の相対的メチル化密度を決定するために対照と比較されうる。同様に、メチル化依存性制限酵素は、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下でDNA座のコピーと接触させられたならば、残っている無傷DNAは、メチル化密度に反比例し、それに従って、試料における座の相対的メチル化密度を決定するために対照と比較されうる。
【0057】
A. 制限酵素での消化
部分的または完全の制限酵素消化のいずれかが、特定のDNA座内のメチル化密度に関する情報を提供するために用いられうる。
【0058】
i. 完全消化
対象となる座を含むDNA試料がメチル化を感知する制限酵素で完全に消化される場合、提供される情報は、制限酵素の認識配列におけるメチル化の有無を含む。制限酵素の切断部位を含む座における無傷DNAの存在は、メチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素による切断に必要な認識部位の適切なメチル化状態が、制限酵素にもよるが、座に、または、の近くに、存在しなかったことを示す。
【0059】
無傷試験DNAの量は、制限酵素と接触しなかった試料由来の等量のDNAを表す対照と比較されうる。または、座における無傷DNAの量は、第二の座を含む同様に処理された無傷DNAと比較されうる、またはすべてのDNA試料が同様に処理された場合、もう一つの細胞から単離されたDNAにおける同じ座と比較されうる。もう一つの代替において、座における無傷DNAの量は、既知または予想される数のメチル化されたモニター可能な制限部位を有し、かつサイズが同程度である同様に処理されたDNAと比較されうる。当業者は、他の対照もまた可能であることを理解しているものと思われる。従って、制限酵素消化後に座における無傷DNAの量を検出することにより、座のコピーの総数と比較したメチル化コピーの相対的数が決定される。
【0060】
認識配列の近くに可変性切断パターンを有する制限酵素(例えば、McrBC)の使用は、DNAの完全消化についての特別な場合を提供する。この場合、たとえ、座が適切なメチル化状態で認識配列を含んでいるとしても、確率の関数に従ってDNAの切断が座の外側で起きるであろうため、メチル化座を含む断片の一部は、無傷のままであろう。それゆえに、McrBCでの完全消化は、無傷対立遺伝子の数に関して、メチル化感受性制限酵素(その認識部位で切断する)での部分的消化に類似してふるまう。
【0061】
McrBC DNA切断の機構は以下のとおりに起こる。McrBの8個のサブユニット複合体は、2つの認識ハーフサイト((AまたはG)mCと表されるプリン-メチルC)のそれぞれに結合する。図7を参照。その後、これらの複合体は、1つのMcrCサブユニットをそれらのそれぞれのハーフサイトへ補充し、GTP加水分解により媒介されてDNAに沿って転位置し始める。2つのMcrBC結合複合体がお互いに接触した場合、二重複合体が形成され、制限が起こる。切断は、一般的に、2つのハーフサイトが20 bpより近い場合には起こらず、お互いと4 kbほどのハーフサイトに起因する制限が観察されたことがあるが、まれである。制限は、いずれかの結合したハーフサイトの〜32 bp左または右で起こることができ、4つの可能性のある切断部位位置:第一ハーフサイトの〜32 bp 5'側、第一ハーフサイトの〜32 bp 3'側、第二ハーフサイトの〜32 bp 5'側、および第二ハーフサイトの〜32 bp 3'側、を与える。それゆえに、2つのハーフサイトが、PCRプライマーにより限定された座内に存在すること、および切断が座の外側で起こることが可能である。2つのハーフサイトが座の外側に存在すること、および切断が座内で起こることもまた可能である。一つのサイトが座に存在すること、およびもう一つが座の外側に存在すること、および切断が座の内側かまたは外側のいずれかで起こることもまた可能である。従って、座の「付近に」(文字通り増幅プライマーの間かまたは隣接するフランキング配列中かを問わず)あるメチル化ハーフサイトが多ければ多いほど、所定の濃度のMcrBCについて切断が座内で観察される可能性は高くなるであろう。従って、完全または部分的消化においてMcrBCにより切断されるメチル化座のコピーの数は、メチル化ヌクレオチドの密度に比例するものと思われる。
【0062】
ii. 部分的消化
部分的(すなわち、不完全)消化におけるメチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素での切断の量は、試料におけるDNAの座内の平均メチル化密度を反映する。例えば、座が対照より高いメチル化密度をもつ場合、メチル化依存性制限酵素を用いる部分的消化は、座のコピーをより頻繁に切断する。同様に、座が対照より低いメチル化密度をもつ場合、メチル化依存性制限酵素を用いる部分的消化は、認識部位がより少なく存在するため、座内において座のコピーをより少ない頻度で切断する。または、メチル化感受性制限酵素が用いられる場合、より高いメチル化密度をもつ座のコピーがより少ないほど、より少なく切断され、従って、この座を含むより多くの無傷DNA鎖が存在する。これらの場合のそれぞれにおいて、問題になっているDNA試料の消化は、完全消化について上で考察されたもののような対照値と比較される。または、消化後の無傷DNAの量は、試料間の相対的メチル化密度を決定するために第二試料と比較されうる。
【0063】
2つまたはそれ以上の試料の間でメチル化密度における微妙なまたは著しい差を分解しうる条件の最適なセットを同定するために様々な条件(例えば、制限の時間、酵素濃度、異なる緩衝液、または制限に影響を及ぼす他の条件)を試験することが有用でありうる。条件は、分析される各試料について決定されうる、または最初に決定されることができ、その後、同じ条件が、多数の異なる試料に適用されることができる。
【0064】
iii. DNA試料
DNAは、用いられうる任意の生物試料から、例えば、細胞、組織、分泌物から、および/または生物体(例えば、動物、植物、真菌、原核生物)から得られうる。試料は、新鮮でありうる、凍結状態でありうる、固定液(例えば、アルコール、ホルムアルデヒド、パラフィン、またはPreServeCyte(商標))に保存されうる、または緩衝液に希釈されうる。生物試料は、例えば、皮膚、血液またはその画分、組織、生検(例えば、肺、結腸、乳房、前立腺、頸部、肝臓、腎臓、脳、胃、食道、子宮、睾丸、皮膚、毛、骨、腎臓、心臓、胆嚢、膀胱など由来)、体液および分泌物(例えば、血液、尿、粘液、痰、唾液、子宮頸管スミア検体、骨髄、大便、汗、濃縮呼気など)を含む。生物試料はまた、葉、茎、根、種、花弁、花粉、胞子、キノコの傘、および樹液を含む。
【0065】
上記の消化は、ゲノムDNA座のすべてのコピーが同一のメチル化パターンをもつDNAの試料を分析するために用いられうる。他の態様において、DNA試料は、ある対立遺伝子が他のものより多くメチル化されているDNA座の対立遺伝子を含むDNAの混合物である。いくつかの態様において、DNA試料は、各細胞型が特定の座において異なるメチル化密度をもっている、2つまたはそれ以上の異なる細胞型由来のDNAを含む。例えば、いくつかの座において、腫瘍性細胞が正常細胞と比較して異なるメチル化密度をもつ。組織、体液、または分泌物が正常および腫瘍性細胞の両方由来のDNAを含む場合には、組織、体液または分泌物からのDNA試料は、異なってメチル化された対立遺伝子の不均一な混合物を含む。この場合、与えられた座において、DNA内の1組の対立遺伝子(例えば、試料において腫瘍性細胞由来のもの)は、他の組の対立遺伝子(例えば、正常細胞由来のもの)とは異なるメチル化密度をもつ。
【0066】
混合された試料において(例えば、健康なおよび罹患性細胞を含む生検において)、試料におけるすべての細胞由来のDNAに渡る平均メチル化密度を測定することよりもむしろ、結果を試料における核酸の1つの集団(例えば、罹患性細胞由来)に焦点を合わせることが役に立つ場合がある。試料におけるDNAの第一集団が低いメチル化をもつまたはメチル化をもたず、かつ試料におけるDNAの第二集団が第一集団より多いメチル化をもつ、いくつかの態様において、第二集団における密度は、試料を1つまたは複数のメチル化感受性制限酵素で切断し(一般的には、「完了」まで切断する)、それにより、第一集団を分解するが、第二集団を実質的に無傷の状態のままにしておくことにより測定されうる。従って、試料はまた、メチル化依存性制限酵素(部分的消化条件下においてMcrBCおよび/または任意のメチル化依存性制限酵素を用いる)と接触させられ、残っている無傷DNAは増幅され、それにより、第二集団におけるメチル化密度を測定されうる。第一集団のメチル化密度は、試料を1つまたは複数のメチル化依存性制限酵素と接触させ(一般的に、「完了」まで切断される)、かつ試料を部分的消化条件下でメチル化感受性制限酵素と接触させることにより、同様に測定されうる。この場合、増幅されたDNAは、第一集団のメチル化密度を表す。
【0067】
B.無傷DNAを検出するための増幅
いくつかの態様において、制限酵素により切断されたDNAの存在および量は、消化後、座を増幅することにより測定されうる。増幅のために無傷DNA鎖の存在を必要とする増幅技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))を用いることにより、残っている非切断DNAの存在および量が測定されうる。例えば、増幅プライマーが対象となる特定の座に隣接するPCR反応が、設計されうる。増幅は、2つのプライマーを含む座が制限消化後に無傷の状態のままである場合に起こる。全体および無傷のDNAの量がわかっている場合には、切断されたDNAの量が決定されうる。DNAの切断は、DNAのメチル化状態に依存するため、無傷および切断されたDNAは、異なるメチル化状態を表す。
【0068】
反応を用いるDNA座の増幅は、周知である(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号;PCR Protocols: A Guide To Methods and Applications (Innis et al., eds, 1990)参照)。典型的には、PCRは、DNA鋳型を増幅するために用いられる。しかしながら、増幅の代替方法が記載されており、代替方法が無傷DNAを、その方法が切断されたDNAを増幅するより高い程度まで増幅する限り、また用いられうる。
【0069】
本発明の方法により増幅されたDNAは、PCR、オリゴマー制限(Saiki, et al., Bio/Technology 3:1008-1012 (1985))、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ分析(Conner, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:278 (1983))、およびオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ法(OLA)(Landegren, et al., Science 241:1077 (1988))などのような特定のDNA配列の検出に通常、適用される任意の方法により、溶液中かまたは固体支持体への結合後かのいずれかで、さらに評価、検出、クローニング、およびシーケンシングなどされうる。DNA分析のための分子技術は概説されている(Landegren, et al., Science 242:229-237 (1988))。
【0070】
定量的増幅方法(例えば、定量的PCRまたは定量的線形増幅)は、制限消化後、増幅プライマーにより隣接される座内において無傷DNAの量を定量化するために用いられうる。定量的増幅の方法は、例えば、米国特許第6,180,349号;同第6,033,854号;および同第5,972,602号に、加えてGibson et al., Genome Research 6:995-1001 (1996); DeGraves, et al., Biotechniques 34(1):106-10, 112-5 (2003); Deiman B, et al., Mol Biotechnol. 20(2):163-79 (2002)に開示されている。増幅は、「リアルタイム」でモニターされうる。
【0071】
一般的に、定量的増幅は、増幅(例えば、PCR)反応のサイクルにおける鋳型のコピーを表すシグナル(例えば、プローブの蛍光)のモニタリングに基づいている。PCRの最初のサイクルにおいて、形成された単位複製配列の量がアッセイ法からの測定可能なシグナル出力を支持しないために、非常に低いシグナルが観察される。最初のサイクル後、形成される単位複製配列の量が増加するにつれて、シグナル強度は、測定可能レベルまで増加し、PCRが非対数期へ入る場合のもっと後のサイクルにおいて平坦部に達する。シグナル強度対サイクル数のプロットを通して、測定可能シグナルがPCR反応から得られる時点の特定のサイクルが推定され、PCRの開始前の標的の量を逆算するために用いられうる。この方法により測定される特定のサイクルの数は、典型的には、サイクル閾値(Ct)と呼ばれる。例示的な方法は、例えば、加水分解プローブに関する、Heid et al. Genome Methods 6:986-94 (1996)に記載されている。
【0072】
増幅産物の検出のための一つの方法は、5'-3'エキソヌクレアーゼ「加水分解」PCRアッセイ法(TaqMan(商標)アッセイ法とも呼ばれる)である(米国特許第5,210,015号および同第5,487,972号;Holland et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280 (1991); Lee et al., Nucleic Acids Res. 21:3761-3766 (1993))。このアッセイ法は、二重標識された蛍光発生的プローブ(「TaqMan(商標)」プローブ)のハイブリダイゼーションおよび切断により特定のPCR産物の蓄積を検出する。蛍光発生的プローブは、蛍光レポーター色素およびクエンチャー色素の両方で標識されたオリゴヌクレオチドからなる。PCR中、このプローブは、それが増幅されることになっているセグメントにハイブリダイズする場合かつその場合に限り、DNAポリメラーゼの5'-エキソヌクレアーゼ活性により切断される。プローブの切断は、レポーター色素の蛍光強度において増加を生じる。
【0073】
エネルギー移転の使用に頼る増幅産物を検出するもう一つの方法は、米国特許第5,119,801号および同第5,312,728号の主題でもあるが、Tyagi and Kramer(Nature Biotech. 14:303-309 (1996))により記載された「ビーコンプローブ」方法である。この方法は、ヘアピン構造を形成することができるオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを用いる。ハイブリダイゼーションプローブの一方の末端(5'末端または3'末端かのいずれか)にドナーフルオロフォアが、他方の末端にアクセプター部分がある。TyagiとKramerの方法の場合、このアクセプター部分はクエンチャーである、すなわち、アクセプターは、ドナーにより放出されたエネルギーを吸収するが、その後、それ自身、蛍光を発しない。従って、ビーコンが開放型高次構造である場合、ドナーフルオロフォアの蛍光は検出できるが、ビーコンがヘアピン(閉鎖型)高次構造である場合、ドナーフルオロフォアの蛍光は消光される。PCRに用いられる場合、PCR産物の鎖の1つにハイブリダイズする分子ビーコンプローブは、開放型高次構造であり、蛍光は検出され、かつハイブリダイズしない状態のままのプローブは、蛍光を発しない(Tyagi and Kramer, Nature Biotechnol. 14:303-306 (1996))。結果として、蛍光の量は、PCR産物の量が増加するにつれて、増加し、従って、PCRの進行の測定として用いられうる。当業者は、定量的増幅の他の方法もまた利用できることを認識しているものと思われる。
【0074】
核酸の定量的増幅を行うための様々な他の技術もまた知られている。例えば、いくつかの方法は、オリゴヌクレオチドが標的核酸にハイブリダイズした場合、蛍光における変化が生じるように構築されている1つまたは複数のプローブオリゴヌクレオチドを用いる。例えば、そのような方法の一つは、蛍光共鳴エネルギー移転(FRET)を利用する二重フルオロフォアアプローチ、例えば、2つのオリゴプローブが単位複製配列にアニーリングする、LightCycler(商標)ハイブリダイゼーションプローブを含む。オリゴヌクレオチドは、効率的なエネルギー移転に適合する距離で離されたフルオロフォアと頭-尾配向においてハイブリダイズするように設計される。核酸に結合した、または伸長産物へ組み入れられた場合にシグナルを発するように構築された標識オリゴヌクレオチドの他の例は、以下を含む:Scorpions(商標)プローブ(例えば、Whitcombe et al., Nature Biotechnology 17:804-807, 1999および米国特許第6,326,145号)、Sunrise(商標)(またはAmplifluor(商標))プローブ(例えば、Nazarenko et al., Nuc. Acids Res. 25:2516-2521, 1997および米国特許第6,117,635号)、および結果としてクエンチャーなしでシグナル低下を生じる二次構造を形成する、かつ標的にハイブリダイズした場合に増加したシグナルを発する、プローブ(例えば、Lux probes(商標))。
【0075】
他の態様において、二本鎖DNAに介入した場合、シグナルを生じるインターカレーティング剤が用いられうる。例示的な作用物質は、SYBR GREEN(商標)およびSYBR GOLD(商標)を含む。これらの作用物質は鋳型特異的ではないため、シグナルは、鋳型特異的増幅に基づいて発生されると仮定される。これは、鋳型配列の融点が一般的に、例えば、プライマー-ダイマーなどよりずっと高いものであるため、鋳型の関数としてシグナルをモニターすることにより確認されうる。
【0076】
C. ハイブリッド捕獲
いくつかの態様において、核酸ハイブリッド捕獲アッセイ法は、制限酵素により切断されたDNAの存在および量を検出するために用いられうる。この方法は、DNAをあらかじめ増幅しようがしまいが、用いられうる。制限消化後、対象となるDNA配列に特異的にハイブリダイズするRNAプローブは、DNAと混合されて、RNA:DNAハイブリッドを形成する。その後、RNA:DNAハイブリッドに結合する抗体が、ハイブリッドの存在、ならびにそれゆえに、非切断DNAの存在および量を検出するために用いられる。
【0077】
RNAプローブに相補的である配列のウィンドウにおいて制限されたDNA断片は、モニターされることになっている配列のウィンドウにおいて無傷の状態のままであるDNA断片がハイブリダイズするより低効率でRNAプローブにハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションの量は、無傷DNAを定量化することを可能にし、DNAメチル化の量は、異なる制限酵素処理(すなわち、メチル化感受性および/またはメチル化依存性制限酵素処理)からの無傷DNAの量から直接的に推測されうる。
【0078】
抗体を用いるRNA:DNAハイブリッドを検出する方法は当技術分野において公知であり、例えば、

に記載されている。場合によっては、抗体は、検出を容易にするために、検出可能な標識(例えば、酵素標識、同位元素、または蛍光標識)で標識される。または、抗体:核酸複合体は、検出可能な標識で標識された二次抗体とさらに接触させられうる。適した免疫学的およびイムノアッセイ手順の概説について、例えば、Harlow & Lane, ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Publication, New York (1988); Basic and Clinical Immunology (Stites & Terr eds., 第7版 1991); 米国特許第4,366,241号;同第4,376,110号;同第4,517,288号;および同第4,837,168号; Antibodies in Cell Biology, 37巻 (Asai, ed. 1993)を参照されたい。
【0079】
モノクローナル、ポリクローナル抗体、またはそれらの混合物は、RNA:DNAハイブリッドを結合するために用いられうる。モノクローナル抗体を用いるRNA:DNAハイブリッドの検出は、例えば、米国特許第4,732,847号および同第4,833,084号に記載されている。ポリクローナル抗体を用いるRNA:DNAハイブリッドの検出は、例えば、米国特許第6,686,151号に記載されている。ポリクローナルまたはモノクローナル抗体は、特定の結合性質をもって作製されうる。例えば、短い方(例えば、20塩基対未満)または長い方(例えば、100塩基対より大きい)のRNA:DNAハイブリッドに特異的に結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体が作製されうる。さらに、RNA:DNAハイブリッド内のミスマッチにより感受性がより高いかまたはより低いかのいずれかである、モノクローナルまたはポリクローナル抗体が産生されうる。
【0080】
RNA:DNAハイブリッドと特異的に反応するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を産生する方法は、当業者に公知である。例えば、適した実験動物(例えば、ニワトリ、マウス、ウサギ、ラット、ヤギ、およびウマなど)を適切な免疫原(例えば、RNA:DNAハイブリッド)で免疫することによる、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の調製。そのような方法は、例えば、Coligan, Current Protocols in Immunology (1991); Harlow & Lane, 前記; Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (第2版 1986);およびKohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975)に記載されている。
【0081】
抗体はまた、組換えで産生されうる。ファージまたは類似したベクターにパッケージングされる組換え抗体をコードする核酸のライブラリーからの抗体の選択による抗体調製は、例えば、Huse et al., Science 246:1275-1281 (1989)およびWard et al., Nature 341:544-546 (1986)に記載されている。さらに、抗体は、当技術分野において公知の方法を用いて組換えで産生されることができ、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (第2版 1989); Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990);およびCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., 1994)に記載されている。
【0082】
D. 対照値の作成
対照値は、外部値(例えば、既知もしくは予想される数のメチル化ヌクレオチドまたはメチル化制限酵素認識配列をもつ第二のDNA試料における無傷座の数)かまたは内部値(例えば、同じDNA試料における第二の座、または第二DNA試料における同じ座)のいずれかを表しうる。有用であるが、対照においてどれくらいの数のヌクレオチド(すなわち、絶対値)がメチル化されているかを知る必要はない。例えば、メチル化が結果として疾患状態を生じる座について、座が正常細胞においてより多くメチル化されているという知識は、試料が得られた対象が疾患をもちうる、または疾患を発症する初期にありうることを示しうる。
【0083】
同じDNA試料が対照座を含む場合において、多重増幅、例えば、多重PCR、は2つまたはそれ以上の座(例えば、少なくとも1つの標的座および少なくとも1つの対照座)を分析するために用いられうる。
【0084】
DNA試料は、メチル化に関して以下の2つのパラメーターにより異なりうる:(i)特定の座に任意のメチル化を有する、集団における総コピーのパーセンテージ、および(ii)任意のDNAメチル化をもつコピーについて、コピー間の平均メチル化密度。試験試料においてこれらのパラメーターの両方を評価する対照DNAを用いることは、理想であるが、必要とはされない。
【0085】
既知のメチル化シトシンを含む対照DNAは、それぞれが異なる標的メチル化認識配列を有しうる、任意の数のDNAメチラーゼを用いて作製される。この手順は、メチル化密度(すなわち、対立遺伝子あたりのメチル化シトシンの数)に関して異なるDNA断片の集団を作製することができる。部分的メチラーゼ反応もまた、例えば、集団についての平均メチル化密度における様式をもつ正常に分布した集団を作製するために、用いられうる。いくつかの態様において、様式は、メチラーゼ反応の完全性の関数として与えられた集団について調整されうる。対照DNAはまた、メチル化および非メチル化DNA塩基で合成されうる。
【0086】
場合によっては、既知の配列をもつDNA標的が用いられる。所望の対照DNAは、メチラーゼおよび分析のための制限酵素の最良の組み合わせを選択することにより作製されうる。第一に、各入手可能なメチラーゼによりメチル化されうる部位の地図が作成される。第二に、座の制限酵素地図もまた作成される。第三に、メチラーゼが、選択されて、試験DNAおよび対照DNA試料のメチル化分析に用いられる制限酵素と組み合わせて最適に機能するように設計される、所望のメチル化パターンをもたらすように対照DNA試料をインビトロでメチル化するために用いられる。例えば、M.HhaIは、部位(GCGC)をメチル化し、McrBCは、モチーフ(RpC)をもつ2つのハーフサイトを認識する。それゆえに、対照配列における各メチル化M.HhaI部位は、McrBCにより認識される。
【0087】
同様に、分子の集団は、その後、マグネシウム存在下においてDNAメチラーゼ(例えば、M.SssI)で処理されて、結果として、所望のメチル化密度を生じうる。反応を、完了まで実行するようにさせておく場合には、メチル化されうる部位のほとんど全部がメチル化され、結果として、高くかつ均質なメチル化密度を生じる。反応がそれの過程において制限される場合には、より低い平均メチル化密度(または部分的メチル化)が結果として生じる(すなわち、反応のタイミングおよび/または酵素の濃度のために、すべての可能な部位がメチル化されるとは限らない)。このようにして、対照DNAの所望の平均メチル化密度が作成されうる。メチル化対照DNAは、亜硫酸水素塩シーケンシングを通してメチル化シトシンの数を測定することにより正確に特徴付けられる。または、メチル化対照DNAは、本明細書に記載されているように他の既知の対照DNAとの比較を通してメチル化シトシンの数を測定することにより正確に特徴付けられうる。
【0088】
メチル化密度のより正確な予測のために、対照セットにおける各試料が、既知かまたは未知かのいずれかの異なるメチル化密度をもっている、標準曲線として便利に働きうるDNAの対照セットを作製することが有用でありうる。複数の試料をメチル化依存性制限酵素またはメチル化感受性制限酵素で、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で切断し、その後、座の残っている無傷コピーを増幅することにより、無傷コピーの量の標準曲線(例えば、Ct値により表される)が作成され、それにより、無傷DNAの量を異なるメチル化密度と相関させることができる。標準曲線は、その後、本明細書に記載されているように、制限および増幅後の試料における無傷DNAの量を補間することにより、試験DNA試料のメチル化密度を決定するために用いられうる。
【0089】
E. メチル化状態特異的増幅
いくつかの態様において、メチル化特異的PCRは、DNA座における特定のヌクレオチドのメチル化状態をモニターするために用いられうる。これらの態様において、制限酵素での消化後または前に、DNAは、非メチル化シトシンを修飾する作用物質と混合される。例えば、亜硫酸水素ナトリウムがDNAに加えられ、それにより、非メチル化シトシンをウラシルへ変換させ、メチル化シトシンを無傷の状態のままにしておく。1つまたは複数のプライマーは、亜硫酸水素ナトリウムで処理されたメチル化と非メチル化の配列の間を識別するように設計される。例えば、亜硫酸水素塩処理されたメチル化配列に相補的なプライマーは、内因性シトシンに相補的であるグアノシンを含む。亜硫酸水素塩処理された非メチル化配列に相補的なプライマーは、ウラシル、非メチル化シトシンの変換生成物、に相補的であるアデノシンを含む。好ましくは、変換されたメチル化および非メチル化の配列の間を区別するヌクレオチドは、プライマーの3'末端に、または、の近くに、ある。亜硫酸水素ナトリウムに基づいたPCRを用いる方法のバリエーションは、例えば、Herman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:9821-9826 (1996); 米国特許第5,786,146号および同第6,200,756号に記載されている。
【0090】
F. 疾患に関連したメチル化の検出
増幅プライマーは、特定の表現型または疾患に関連した座を増幅するように設計されうる。そのような変化が疾患に関連している座における変化したメチル化プロファイルの検出は、疾患の診断または予後を提供するために用いられうる。例えば、表1を参照されたい。また、Costello and Plass, J Med Genet 38:285-303 (2001)およびJones and Baylin, Nature. Rev 3:415-428 (2002)も参照されたい。
【0091】
(表1)癌における過剰メチル化を示す遺伝子の例

【0092】
例えば、p16座のメチル化は膵臓癌に関連している。例えば、Schutte et al., Cancer Res. 57:3126-3131 (1997)を参照されたい。腎臓におけるインスリン様成長因子II/H19座におけるメチル化変化は、ウィルムス腫瘍形成に関連している。例えば、Okamoto et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:5367-5371 (1997)を参照。p15、E-カドヘリンおよびフォン・ヒッペル・リンドウ座、におけるメチル化の変化の関連もまた、癌に関連している。例えば、Herman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:9821-9826 (1997)を参照。GSTP1のメチル化状態は、前立腺癌と関連している。例えば、米国特許第5,552,277号を参照。
【0093】
ゲノムDNA試料は、当技術分野において公知の任意の手段により得られうる。特定の表現型または疾患が検出されることになっている場合において、DNA試料は、対象となる組織から、または必要に応じて、血液から、調製されるべきである。例えば、DNAは、癌に関連した特定の座のメチル化状態を検出するために生検組織から調製されうる。メチル化座の検出のために用いられる核酸含有検体(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1995 supplement))は、任意の源由来であることができ、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1995)またはSambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (第3版 2001)により記載されているもののような様々な技術により抽出されうる。例示的な組織は、例えば、脳、結腸、尿生殖器、造血、胸腺、睾丸、卵巣、子宮、前立腺、乳房、肺および腎臓の組織を含む。
【0094】
DNA試料における変化したメチル化(正常細胞と比較して)の座の検出および同定は、試料が由来している細胞の少なくとも一部が病気に罹っていることを示しうる。そのような疾患は、限定されるわけではないが、例えば、低悪性度星状細胞腫、未分化星状細胞腫、グリア芽腫、髄芽細胞腫、結腸癌、肝臓癌、肺癌、腎臓癌、白血病(例えば、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病)、リンパ腫、乳癌、前立腺癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、神経芽細胞腫、口腔(例えば、舌、口、咽頭)の癌、食道癌、胃癌、小腸の癌、直腸癌、肛門癌、肛門管および肛門直腸の癌、肝内胆管の癌、胆嚢癌、胆管癌、膵臓癌、骨癌、関節の癌、皮膚癌(例えば、黒色腫、非上皮癌、基底細胞癌、扁平上皮癌)、軟部組織癌、子宮癌、卵巣癌、外陰癌、膣癌、泌尿器癌、尿管の癌、眼の癌、頭頸部癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、脳癌、神経系の癌を含む。変化したメチル化プロファイルの同定はまた、ゲノミックインプリンティングの喪失、脆弱性X症候群、およびX染色体不活性化の検出ならびに診断に有用である。
【0095】
必要に応じて、多重DNA方法が、同じ試料由来の複数標的を増幅するために用いられうる。追加の標的は、対照(例えば、既知のメチル化状態の座由来)、または表現型もしくは疾患に関連した追加の座を示しうる。
【0096】
いくつかの態様において、本発明の方法は、癌のような疾患表現型に関連した新しい座を同定するために用いられる、またはそのような関連を確証するために用いられる。
【0097】
F. 座における相対的メチル化を測定する例示的な方法
上記のように、対象となる遺伝子座におけるメチル化の相対的量を測定するために、多数の可能性が利用できる。例えば、部分的または完全消化が行われうる、メチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素が用いられうる、亜硫酸水素ナトリウム処理が用いられうるなど。本発明を特定のシリーズの段階に限定することを意図することなく、以下の可能性がさらに例示される。
【0098】
いくつかの態様において、DNA試料は、McrBCまたは別のメチル化依存性制限酵素で消化され(部分的にまたは完了まで)、座は、その後、定量的DNA増幅(例えば、PCR、ローリングサークル増幅、および当業者に公知の他の方法)を用いて増幅される。結果として生じる増幅反応の動力学的プロファイルは、同様に処理された対照DNA試料由来のものと比較される。増幅反応の動力学的プロファイルは、TaqMan(商標)、molecular beacons、介入色素(例えば、Sybr Green(商標))取り込み、SCORPION(商標)プローブ、およびLux(商標)プローブなどの蛍光反応モニタリングを含む、当業者に公知の多数の手段により得られうる。
【0099】
いくつかの態様において、DNA試料は、均等に分割され、1つの部分がメチル化依存性制限酵素で処理され、別のものは処理されない。2つの部分は、座におけるメチル化の相対的量を決定するために増幅かつ比較される。
【0100】
いくつかの態様において、DNA試料は、等しい部分に分割されることができ、各部分は、McrBCまたはもう一つのメチル依存性制限酵素での異なる量の部分的消化にかけられる。様々な部分における無傷座の量(例えば、定量的DNA増幅により測定されるような)は、対照集団(非切断DNAを代表する同じ試料かまたはもう一つのDNA試料由来の等しい部分かのいずれかからの)と比較されうる。等価の部分が第二DNA試料由来である場合において、第二試料は、メチル化ヌクレオチドの予想されるまたは既知の数(または少なくともメチル化されている制限酵素認識配列)を有しうる、または、メチル化認識配列の数が不明でありうる。後者の場合、対照試料は、しばしば、生物学的関連性のある試料由来、例えば、罹患または正常組織由来など由来、である。
【0101】
いくつかの態様において、DNA試料は、1つまたは複数のメチル化感受性制限酵素で部分的に消化され、その後、無傷の座を同定するために増幅される。これらの場合における対照は、上記のメチル化依存性制限酵素消化に用いられたものと同様である。処理されない対照は消化されず、任意の処理される対照DNA試料は、メチル化感受性制限酵素で消化される。
【0102】
いくつかの態様において、試料は、少なくとも2つの部分へ分離される。第一部分は、制限酵素の3つの可能なメチル化を感知するクラス(すなわち、メチル化感受性、メチル化非感受性、およびメチル化依存性)の1つからの酵素で消化される。追加の部分のそれぞれは、第一部分を消化するために用いられた酵素とは異なるメチル化を感知するクラスからのアイソシゾマーパートナーで消化される。無傷の座は、その後、増幅されて、定量化される。座における相対的メチル化は、消化されていない部分との比較の有無にかかわらず、反応の任意の2つから得られた結果をお互いに比較することにより決定されうる。メチル化非感受性酵素が用いられた場合、部分は典型的には部分的消化を受ける。
【0103】
いくつかの態様において、DNA試料は、非メチル化シトシンを修飾するが、メチル化シトシンを修飾されない状態のままにしておく作用物質、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、で処理される。試料は、均等に分割され、1つの部分は、メチル化依存性制限酵素(例えば、McrBC)で処理される。亜硫酸水素ナトリウムは、非メチル化シトシンを修飾し、各McrBCヘミサイトの認識部位は、続いてメチル化シトシンがあるプリン塩基であるため、亜硫酸水素ナトリウム処理は、McrBC認識部位を修飾しない。切断および非切断部分の両方からの試料は、その後、メチル化と非メチル化のヌクレオチドの間を識別する少なくとも1つのプライマーを用いて増幅される。増幅された部分は、その後、相対的メチル化を決定するために比較される。特定の定量的増幅法は、増幅プライマーと異なる1つまたは複数の検出プローブを用いる。これらの検出プローブもまた、変換されたメチル化と非メチル化のDNAの間を識別するように設計されうる。いくつかの態様において、検出プローブは、メチル化依存性制限酵素(例えば、McrBC)と組み合わせて用いられる。例えば、検出プローブは、変換されたMcrBC処理試料とMcrBCで処理されなかった変換された試料の間の動力学的増幅プロファイルを比較することにより、座内のメチル化密度を定量化するために用いられうる。
【0104】
または、いくつかの態様において、試料は、均等に分割され、1つの部分は、メチル化依存性制限酵素(例えば、McrBC)で消化される(部分的にまたは完全に)。両方の部分は、その後、亜硫酸水素ナトリウムで処理され、変換されたメチル化と非メチル化のヌクレオチドの間を識別するプライマーを用いる定量的増幅により分析される。増幅産物は、相対的メチル化密度を決定するために、お互いに、加えて標準と、比較される。
【0105】
いくつかの態様において、DNA試料は、部分へ分割され、1つの部分は、1つまたは複数のメチル化感受性制限酵素で処理される。消化された部分は、その後、さらに細分され、1つの下位分割部分は、メチル化依存性制限酵素(例えば、McrBC)で消化される。様々な部分および下位部分は、その後、増幅されて、比較される。消化後、部分または下位部分は、任意で、亜硫酸水素ナトリウムで処理され、メチル化と非メチル化のヌクレオチドの間を識別する少なくとも1つのプライマーを用いて増幅されうる。
【0106】
いくつかの態様において、DNA試料は、以下の4つの部分へ分割される:第一部分は未処理の状態のままにされる、第二部分は、メチル化感受性制限酵素に接触させられる(無傷配列はメチル化されている)、第三部分は、メチル化依存性制限酵素に接触させられる(無傷配列はメチル化されていない)、および第四部分は、メチル化感受性制限酵素およびメチル化依存性制限酵素に接触させられ、第四部分における制限酵素の1つは、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で(例えば、部分的消化および/またはMcrBCを用いる条件下で)、試料に接触させられる。図13を参照されたい。必要に応じて、試料の第五部分は、もう一つの部分に用いられたメチル化依存性またはメチル化感受性制限酵素のメチル化非感受性アイソシゾマーでの処理後、分析されることができ、それにより、制限酵素認識配列における不完全消化および/または突然変異について調節する。消化に加えて、部分および下位部分は、任意で、亜硫酸水素ナトリウムで処理され、メチル化と非メチル化のヌクレオチドの間を識別する少なくとも1つのプライマーを用いて増幅されうる。
【0107】
III. サイクル閾値に基づいたメチル化密度の計算
上記のように、サイクル閾値(Ct)は、増幅反応においてDNA鋳型の最初の量を決定するための有用な測定である。従って、本明細書に記載されているように、メチル化依存性および/またはメチル化感受性制限酵素で処理され、かつ増幅された試料からのCt値は、用いられたメチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素の認識配列におけるメチル化密度を計算するために用いられうる。1つの試料と対照値(第二試料からのCt値を表しうる)の間のCt値における変化は、相対的メチル化密度を予測する。PCRにおける増幅は、理論的には、サイクルごとにコピーを2倍にするため、2Xは、指数関数的増幅中の増幅におけるコピーの数に近似し、Xはサイクルの数である。従って、2Ctは、増幅の開始時における無傷DNAの量に比例する。2つの試料の間、または試料と対照値(例えば、対照からのCt値を表す)の間のCtの変化(ΔCt)は、試料における最初の出発鋳型における差を表す。それゆえに、2|ΔCt|は、試料と対照または第二試料の間の相対的メチル化密度差に比例する。例えば、実施例9に説明されているように、2つの試料(それぞれ、メチル化依存性制限酵素で処理され、その後、増幅された)間のCtにおける1.46の差は、一方の試料が、他方の試料より、座内に少なくとも2.75(すなわち、2(1.46)=2.75)倍多い可能性のあるメチル化制限部位を有することを示している。
【0108】
VI. キット
本発明はまた、本発明の方法を行うためのキットを提供する。例えば、本発明のキットは、例えば、メチル化依存性制限酵素またはメチル化感受性制限酵素、あらかじめ決められた数のメチル化ヌクレオチドを含む対照DNA分子、および対照DNA分子にハイブリダイズする1つまたは2つの異なる対照オリゴヌクレオチドプライマーを含みうる。場合によっては、キットは、ユーザーが試料の増幅を既知の数のメチル化ヌクレオチドを含むいくつかのDNAと比較することができるように、メチル化ヌクレオチドの異なるあらかじめ決められた数を含む複数のDNA分子を含む。
【0109】
本発明のキットは、しばしば、キットを用いるための書面にした使用説明書を含む。キットはまた、制限酵素の活性を支えるのに十分な試薬を含みうる。キットはまた、耐熱性DNAポリメラーゼを含みうる。
【0110】
場合によっては、キットは、ヒトゲノムDNAのあらかじめ決められた領域にハイブリダイズする1つまたは2つの異なる標的オリゴヌクレオチドプライマーを含む。例えば、上記のように、プライマーは、疾患の発生または予測に関連した座の増幅を可能にすることができる。
【0111】
いくつかの態様において、キットは、標的ポリヌクレオチドの増幅をモニターするために1つまたは複数の検出可能に標識されたオリゴヌクレオチドプローブを含みうる。
【0112】
いくつかの態様において、キットは、ヒトゲノムDNAにおいて修飾された非メチル化とメチル化のDNAの間を識別する少なくとも1つの標的オリゴヌクレオチドプライマーを含む。これらの態様において、キットはまた、典型的には、任意の増幅反応の動力学的プロファイルがリアルタイムで獲得されるのを可能にする蛍光部分を含む。
【0113】
いくつかの態様において、キットは、ヒトゲノムDNAにおいて修飾された非メチル化とメチル化のDNAの間を識別する少なくとも1つの標的オリゴヌクレオチドプライマーを含む。これらの態様において、キットはまた、典型的には、非メチル化シトシンを修飾する作用物質を含む。
【0114】
いくつかの態様において、キットは、RNAプローブ、RNA:DNA複合体を特異的に結合する結合剤(例えば、抗体または抗体模倣体)、検出試薬、ならびにメチル化感受性および/またはメチル化依存性制限酵素を含む。
【0115】
実施例
実施例1:DNAメチル化標準試料セットの構築
標準試料セットは多数の方法で作製される。例えば、メチル化密度の増加を有することがわかっているDNAの標準セットを作製するために、メチラーゼ(例えば、M.SssIまたはM.HhaI、M.AluIのような他のメチラーゼ)が、一連のDNA試料へインビトロで適用される。この標準セットは、最初に既知の配列(例えば、対象となる座)の試料を得ることにより作製される。次に、試料は、1シリーズの試料へ分割され、シリーズにおける各試料は、マグネシウムの存在下で、かつ結果として、シリーズにおける試料のメチル化密度を増加させるような様式において、選択されたメチラーゼで処理される。
【0116】
部分的メチル化反応は、DNAを1つまたは複数のメチラーゼのカクテルと、メチラーゼがメチラーゼカクテルにおける各酵素についての可能なメチラーゼ認識部位の全部ではないが一部(例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%)を修飾するような適切な反応条件下で、接触させることを指す。DNA配列は、完全メチル化を達成するのに必要である時間より短い時間、DNAを活性メチラーゼで処理し、その後、反応を終結させることにより、または所望の量の部分的メチル化を可能にする他の変更された反応条件下において、部分的にメチル化される。
【0117】
シリーズにおける各試料のメチル化密度は、セットにおける各シリーズメンバーの亜硫酸水素塩処理された部分由来のクローンの統計学的に有意な試料をシーケンシングすることにより、各クローン内の変換されたシトシンを同定することにより、およびメチル化試料セット内で各反応について平均メチル化密度を計算することにより、測定される。与えられた断片において部分的メチル化密度を達成するために、メチラーゼは、確率論的様式であって、前進的様式ではない、様式で作用する。M.SssIについて、M.SssIは、マグネシウム非存在下において前進的様式でDNAをメチル化し、一方、マグネシウムの存在下において、その酵素は非前進的な確率論的様式でCpGをメチル化するため、これは、反応をマグネシウムの存在下において行うことにより達成される。
【0118】
実施例2:定量的増幅での、一つの組織ともう一つの組織の間の対象となる座の相対的メチル化の定量的測定
DNAは、以下の2つの源:試験集団(罹患した)および対照集団(正常)、から収集される。
【0119】
DNA断片の各集団は、酵素McrBCでの様々な部分的または完全消化に同じようにかけられる。McrBCは、2つのRMC部位、40〜3,000塩基内にあり、かつ50〜103 bpのハーフサイトの最適な分離をもつ各ハーフサイト、を認識し、その後、時々、両方のハーフサイトの3'側で、時々、最も5'側のハーフサイトの3'側および最も3'側のハーフサイトの5'側で、ならびに時々、両方のハーフサイトの5'側で、DNA断片を切断する。
【0120】
次に、各集団における消化されたDNAは増幅され、増幅された座の量は、サイクル数の関数として測定される。研究されている集団内の与えられたDNA断片上の対象となる座におけるメチル化ハーフサイトの数が多ければ多いほど、McrBCがPCRプライマー間を切断する可能性が大きく、それゆえに、より大きい数の増幅サイクルが、増幅されたPCR座の同一の濃度を達成するのに必要とされる。
【0121】
試験集団内の対象となる座が、対照集団内の対象となる座より多くメチル化されているかまたは少なくメチル化されているかを決定するために、試験集団の増幅DNAの濃度曲線が、対照集団由来の増幅DNAの濃度曲線と比較される。濃度曲線は、無傷DNAの量を、一連の異なる部分的消化における消化の量の関数として反映する。
【0122】
実施例3:定量的増幅での、組織内の対象となる座におけるメチル化密度の測定
DNAは、単一の源から得られ、2つの集団へ分割される。DNAの第一集団は、酵素McrBCで完全に消化され、一方、残りの集団は処理されない。または、第一集団は、1つまたは複数のメチル化感受性制限酵素(例えば、Hpa II、Hha I、またはAci Iなど)のカクテルで消化され、一方、DNAの第二集団は処理されない。
【0123】
次に、第一集団における消化されたDNAは増幅され、増幅された座の量は、サイクル数の関数として測定される。研究されている集団内の与えられたDNA断片上の対象となる座におけるメチル化ハーフサイトの数が多ければ多いほど、McrBCがPCRプライマー間を切断する可能性が大きく、それゆえに、より多い数の増幅サイクルが、増幅されたPCR座の同一の濃度を達成するのに必要とされる。または、メチル化感受性制限酵素のカクテルが用いられる場合、研究されている集団内の与えられたDNA断片上の対象となる座におけるメチル化制限部位の数が多ければ多いほど、メチル化感受性酵素カクテルがPCRプライマー間を切断する可能性は低い。それゆえに、より少ない数の増幅サイクルが、増幅されたPCR座の同一の濃度を達成するのに必要とされる。
【0124】
第一集団内の対象となる座がメチル化されているかどうかを決定するために、処理された、および処理されていない集団からの増幅反応プロファイルの動態間において比較がなされる。または、対象となる座における組織内のメチル化密度を測定するために、増幅反応プロファイルの動態が、既知のインビトロで作製されたメチル化試料セットから得られたもの、すなわち、標準メチル化曲線、と比較される。
【0125】
実施例4:増幅終点分析での、組織内の対象となる座におけるメチル化密度の測定
DNAは、単一の源から得られ、1シリーズの2つまたはそれ以上の部分へ分割される。
【0126】
このシリーズは、McrBCのようなメチル化依存性制限酵素により増加性量の部分的消化に曝される。DNA断片の第一部分は、処理されず、第二部分は、McrBCで軽く消化され、その後の集団は、McrBCでより完全に(しかし、完全には満たずに)消化される。部分的消化の範囲は、酵素量、消化時間、温度、反応物、緩衝液または他の必要とされる成分の滴定のような反応条件の操作を通して得られる。
【0127】
次に、シリーズの部分からのDNAは増幅され、増幅されたPCR座の量は、一定数のサイクル後、測定される。第一のMcrBC処理された部分内の与えられたDNA断片上の対象となる座におけるメチル化ハーフサイトの数が多ければ多いほど、McrBCがPCRプライマー間の第一部の断片を切断する可能性が大きく、それゆえに、より多い数の増幅サイクルが、第一部分における増幅されたPCR座の一定の濃度を検出するのに必要とされる。
【0128】
試験集団内の対象となる座が多くメチル化されているか少なくメチル化されているかを決定するために、シリーズの部分から得られた結果および標準試料セットの平行分析が比較される(実施例1参照)。
【0129】
実施例5:メチル化を感知するアイソシゾマーのパートナーおよび定量的PCRを用いるメチル化の定量化
DNAは、以下の2つの源:試験集団(罹患した)および対照集団(正常)、から収集される。
【0130】
各集団は、2つまたはそれ以上の部分の群へ分割される。各群は、メチル化感受性制限酵素(例えば、Hpa II、Mbo I(A))による増加性量の部分的消化に曝される。DNA断片の第一部分は処理されず、第二部分はメチル化感受性制限酵素で軽く消化され、その後の集団は、その酵素でより完全に消化される(しかし、完了までには満たない)。部分的消化の範囲は、酵素量、消化時間、温度、反応物、緩衝液または他の必要とされる成分の滴定のような反応条件の操作を通して得られる。
【0131】
部分の第二群は、同様に、部分の第一群を処理するために用いられた酵素とは異なるメチル化を感知するクラスのアイソシゾマーのパートナーで消化される(例えば、それぞれ、Msp IおよびSau3AI(A))。または、部分の第二群は処理されない状態のままである。
【0132】
次に、群におけるすべての部分は増幅され、各増幅からの動力学的反応プロファイルが得られる。または、一定数のサイクル後の終点分析が用いられる。
【0133】
試験集団内の対象となる座がより多くメチル化されているかまたはより少なくメチル化されているかを決定するために、群間(群対群)の動力学的反応プロファイルの間で比較がなされる。さらに、2つの組織の間での対象となる座がより多くメチル化されているかまたはより少なくメチル化されているかを決定するために、集団間(罹患した群対正常な群)の動力学的反応プロファイルの間で比較がなされる。
【0134】
実施例6:メチル化感受性酵素のカクテルを用いる対象となる座のメチル化密度の定量化
DNAは、単一の源から得られ、2つまたはそれ以上の部分の群へ分割される。または、DNAは、以下の2つの源:試験集団(罹患した)および対照集団(正常)、から収集され、2つまたはそれ以上の均一な部分の群へ分割される。
【0135】
均一な部分の群は、1つまたはそれ以上のメチル化感受性制限酵素(例えば、Hpa II、Hae III)のカクテルの一定数のユニットで様々な量の時間、処理される。
【0136】
次に、群におけるすべての部分は増幅され、各増幅からの動力学的反応プロファイルが得られる。または、一定数のサイクル後の終点分析が用いられる。
【0137】
試験集団内の対象となる座がより多くメチル化されているかまたはより少なくメチル化されているかを決定するために、群間(群対群)の動力学的反応プロファイルの間で比較がなされる。さらに、2つの組織の間での対象となる座がより多くメチル化されているかまたはより少なくメチル化されているかを決定するために、集団間(罹患した群対正常な群)の動力学的反応プロファイルの間で比較がなされる。最後に、メチル化の全体量が、これらの結果を標準試料セットから得られたものと比較することにより決定されうる(実施例1参照)。
【0138】
実施例7:非メチル化対立遺伝子の大きな集団の存在下におけるメチル化対立遺伝子の小さな集団のメチル化密度の定量化
DNAは、単一の源から得られ、2つの部分へ分割される。または、DNAは、以下の2つの源:試験集団(罹患した)および対照集団(正常)、から収集され、各集団は2つの部分へ分割される。
【0139】
メチル化と非メチル化の対立遺伝子の間を識別するために、各集団由来の1つの部分が亜硫酸水素ナトリウムで処理され、非メチル化シトシン残基をウラシルへ変換し、変換されないメチル化シトシン残基を残す。亜硫酸水素塩処理された部分は、2つの等しい下位部分へ分割される。または、各集団由来の1つの部分が、1つまたはそれ以上のメチル化感受性制限酵素(例えば、Hpa II、Hha Iなど)のカクテルで消化され、残りの部分を処理されない状態のままにしておく。消化された部分は、同様に、2つの等しい下位部分へ分割される。
【0140】
亜硫酸水素塩処理された下位部分の1つは、酵素McrBCで完全に消化され、一方、残りの下位部分は処理されない。または、メチル化感受性制限酵素処理された下位部分の1つが、酵素McrBCで完全に消化され、一方、残りの下位部分は処理されない。
【0141】
増幅プライマーの1つまたは両方は、少なくとも1つのメチル化シトシン残基を重複している亜硫酸水素塩変換された配列に似ているように設計される。このように、試験集団における、そのプライマーにおいてメチル化されていた断片のサブセットに属する断片のみが、増幅されることになる可能性をもち、一方、対象となる座においてメチル化されない状態のままであった断片のサブセットにおける断片は、増幅されない。または、メチル化感受性酵素がメチル化と非メチル化の対立遺伝子の間を識別するために用いられる場合には、本来の配列に対して設計されたプライマーが用いられ、認識部位においてメチル化されていた対立遺伝子のみが無傷の状態のままであり、増幅される。
【0142】
次に、McrBCで処理された、およびMcrBCで処理されていない部分の両方からのDNAは、関連した対照と共に、増幅され、増幅されたPCR座の量は、サイクル数の関数として測定される。
【0143】
第一集団内の対象となる座がメチル化されているかどうかを決定するために、処理された、および処理されていない集団からの増幅反応プロファイルの動態の間で比較がなされる。対象となる座における組織内のメチル化密度を決定するために、増幅反応プロファイルの動態が、既知のインビトロで作製されたメチル化試料セットから得られるもの、すなわち、標準メチル化曲線、と比較される。
【0144】
または、この実施例はまた、上記の亜硫酸水素ナトリウム変換およびMcrBC消化段階の順序を逆にすることにより行われうる(すなわち、McrBC消化が、亜硫酸水素ナトリウム変換の前に行われる)。
【0145】
もう一つの代替において、McrBCを用いる部分的消化は、完全消化の代わりに、下位部分かまたはシリーズの下位部分かのいずれかにおいて用いられる。
【0146】
実施例8:検出の感度の実証
ヒト男性胎盤DNAを得て、シトシンの後にグアノシンが続く(すなわち、GCモチーフ)場合シトシンをメチル化する(5mC)、M.SssIを用いてインビトロでメチル化した。結果として生じるインビトロメチル化DNAを、その後、既知の比率で非メチル化男性胎盤DNAへ混合し、それにより、それぞれがメチル化されている総コピーの異なるパーセンテージを含む、1組の混合物を作製した。
【0147】
様々な混合物を、その後、以下の3つの部分へ分割した:切断されていない部分;Hha I、5mCに対して感受性があり、かつ認識配列GCGC(下線を引いたヌクレオチドはメチル化されていない)をもつメチル化感受性制限酵素、で消化された部分;Hha IおよびMcrBCの両方で消化された部分。McrBCは、それのメチル化認識配列の近くを切断するメチル化依存性制限酵素である。消化された配列を、その後、ヒトゲノム-[Ensembl遺伝子ID# ENSG00000147889]におけるCDKN2A(p16)遺伝子の上流の領域に特異的なプライマーを用いて増幅した。この領域は、インビトロでメチル化されなかったヒト男性胎盤DNAにおいてメチル化されていないことが測定された。プライマー配列は以下であった。

および標準PCR条件は以下のものを用いた。
1サイクル[95℃で3分間]
続いて、49サイクル[95℃で30秒間、65℃で15秒間、および68℃で15秒間、プレートを68℃で読み取り、その後、もう一つのプレートを83℃で読み取る]。
【0148】
83℃での第二プレート読み取りは、反応プロファイルへのプライマーダイマーの蛍光寄与を排除するために行われた。温度の関数として蛍光を測定する融解曲線は、サイクルの終わりに80℃と95℃の間で行われ、産物特異性が測定された。対象となる座は、長さが181 bpであり、約89℃の融解温度をもつ。増幅産物蓄積は、それが二本鎖核酸に結合する時蛍光を発する、インターカレーティング色素、MJ ResearchからのSYBR Green(商標)Dynamo Kit、を用いて測定され、反応は循環されて、蛍光強度は、MJ Opticon IIリアルタイムPCR装置を用いてモニターされた。
【0149】
増幅産物からのシグナルがバックグラウンドより上で検出されうる閾値は、鋳型希釈標準曲線の平行分析から経験的に決定された。閾値は、例えば、Fortin et al., Anal. Biochem. 289:281-288 (2001)に記載されたもののような当業者によく知られている標準閾値測定プロトコールに従って、回帰曲線(Ct対log[DNA])の適合度を最大にするように調整された。いったん設定されたならば、閾値は、固定され、各反応についてのサイクル閾値(Ct)は、ソフトウェア(MJ Research Opticon II Monitor V2.02)により計算された。予想されたように、導かれたサイクル閾値は、メチル化対非メチル化DNAのより高い希釈度において増加した(図1)。また図1に示されているように、非切断DNAとHha I処理DNAの間のサイクル閾値における変化(または「シフト」)(ΔCt)は、希釈度について期待されたもの(E)と一致し、サイクル閾値シフトは、試料におけるコピーの総数の中から試料におけるメチル化されているコピーの相対的割合を正確に予測するために用いられうることを実証した。
【0150】
図1はまた、Hha I(メチル化感受性制限酵素)およびMcrBC(メチル化依存性制限酵素)の添加が、Hha I単独で処理された試料と比較してCtをさらに変化させることを例証している。メチル化依存性制限酵素およびメチル化感受性酵素での処理後の、無傷コピーの数における低下ならびに結果として生じたより高いCt値へのCtシフトは、メチル化感受性制限酵素単独での処理後に存在する無傷コピーが実際にメチル化されているという評価をさらに確認している。換言すれば、この二重消化は、Hha Iが添加されなかった、不活性であった、部分的に活性であった、または別なふうに結果として完全消化を生じなかったという可能性に対する対照を提供する。メチル化依存性制限酵素の添加およびメチル化鋳型を破壊するそれの能力は、メチル化感受性制限酵素だけでの処理後に観察された結果を確認し、メチル化感受性制限酵素反応の完全性を評価するための内部対照を提供する。
【0151】
図2は、メチル化DNA対非メチル化DNAの3つの希釈度における4つの部分の動力学的プロファイルを示している。3つの希釈度のそれぞれにおいて、すべての4つの部分は、最初に、メチル化感受性制限酵素Hha Iで消化された。各希釈度における第一の2つの部分は、McrBCで消化され、各希釈度における第二の2つの部分は、McrBCに関して処理されなかった。すべての部分は、その後、同一条件下で増幅され、蛍光強度が測定された。3つの観察がなされうる。第一に、二連の反応はほとんど同一のCt値をもち、アッセイは高い再現性があることを実証している。第二に、メチル化コピーの増加する希釈度の関数としての処理および未処理の部分の間でのCtにおける減少する変化は、メチル化遺伝子コピーがよりまれになるにつれて、McrBC処理および未処理の部分の間で観察されるCt値間の差はより少ない。これは、Hha IおよびHha I+McrBC反応が収束するだろうこと、およびある時点で、メチル化密度をモニターすることができないであろう、またはメチル化コピーの存在もしくは非存在を同定することができないであろうことを示唆している。検出の理論上の消滅は、ゼロのΔCtにおいて起こるであろう。回帰分析を用いて、本発明者らの系における消滅関数について解き、ΔCt=0の場合の希釈度は、それぞれ、1:20,000、メチル化コピー対非メチル化コピー、であることを見出した。この回帰分析は、図4に詳細に示されている。
【0152】
図2は、それぞれ、1:2,000メチル化コピー対非メチル化コピーへすべて希釈された一連の部分の蛍光動力学的プロファイルを示す。1:2,000反応から得られた全体的な蛍光は理想ではないが、Hha IとHha I/McrBCの反応の間の差を見ることができる。McrBC消化は蛍光の蓄積を破壊することを留意されたい、図3における融点曲線は、181 bpの特定の単位複製配列についての予測される融解温度である89℃において特異的なピークを示している。ここで、本発明者らは、明らかに、ただ、DNAの合計2,762の細胞等量へ希釈されたメチル化DNAの1.4細胞等量だけを検出している。
【0153】
図4に示されているように、1.4細胞等量(CE)は、合計20 ngのゲノムDNAを有するチューブにおける合計2,764 CEから検出された。各細胞等量は、1細胞あたり約7.9 pgのゲノムDNAを有する。従って、50 ngのゲノムDNAが用いられる場合には、10,000個の非メチル化コピーの存在下における1個のメチル化コピーが検出できるはずである。この原理は図4に例証されている。図5は、この分析の明細を提供している。この検出限界は、(i)増幅産物を検出するために、インターカレーティング色素よりむしろ、最適化FRETに基づいたプローブを用いることにより、(ii)PCRプライマー設計をさらに最適化することにより、または(iii)PCR反応条件をさらに最適化することにより、さらに低下させられうることを留意されたい。
【0154】
実施例9:メチル化密度の検出
この実施例は、座内のメチル化の平均密度(すなわち、メチル化ヌクレオチドの平均数)を測定することを実証している。図6に提供されているように、多くの疾患において、1つまたは複数の座のメチル化は、疾患進行に対応してメチル化密度の増加の進行を受ける。以前に記載されたメチル化検出技術は、1つもしくは複数の特定のヌクレオチドにおけるメチル化の有無を検出することを含むが、座に渡っての密度の分析を提供しない。対照的に、本発明は、座内のメチル化事象の平均数を検出するための方法を提供する。
【0155】
図11〜12に例証されているように、特定の短い配列のみにおけるメチル化を検出する方法(典型的には、プライマーまたはプローブハイブリダイゼーションに頼る)は、本メチル化密度検出方法(座全体に渡って相対的メチル化を調べる)が検出できる(図12参照)メチル化における変化を見逃す可能性がある(図11参照)。
【0156】
この発見は、座をメチル化依存性またはメチル化感受性制限酵素で、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであるような条件下で処理することにより働く。これらの条件は、試料の部分的消化を可能にすることにより達成されうるが、McrBCの特定の認識および切断活性は、追加の選択を可能にする。
【0157】
上で考察されているように、2つのMcrBC複合体が出会う場合、典型的には、どちらかのハーフサイトから〜32 bp内に(すなわち、4つの領域の1つにおいて)、制限が起こる。図7を参照されたい。制限は、ハーフサイトが20 bpより近い場合には起こらない。
【0158】
McrBCは、認識されるハーフサイトのペアの5'側または3'側を無作為に切断するため、座(PCRの場合、プライマーにより張られる)において切断する可能性は、座における、またはの近くの、メチル化ハーフサイトの数の関数である。酵素の設定濃度およびインキュベーション時間について、座内のメチル化部位が多ければ多いほど、McrBCがその座において(またはPCRの場合、プライマー間を)切断する可能性は大きくなる。しかしながら、理想的な環境およびDNAコピーの十分な数の下では、McrBCが座のあらゆるコピーを切断する可能性は低く、なぜなら、それが、時々、座の外側に少し離れて切断し、それにより座を無傷の状態のままにしておくためである。従って、無傷の座の数は、座内のメチル化ヌクレオチドの平均数に反比例する。無傷の座の数は、一定の試料についてのCt値に反比例する。従って、Ct値は、座内のメチル化ヌクレオチドの平均数に比例する。従って、増幅された未処理のDNAからのCt値と比較した増幅されたMcrBC処理のDNAのCt値の比較は、座のメチル化密度の決定を可能にする。
【0159】
p16座を含むBAC DNAの2つのアリコートは、インビトロで、異なる密度でメチル化された。第一アリコートは、M.SssIで密にメチル化された。PCR単位複製配列内に20個のM.SssIメチラーゼ部位があり、そのうちの11個はまた、McrBCハーフサイトでもある。第二アリコートはM.HhaIでまばらにメチル化された。PCR単位複製配列内に4個のM.HhaIメチラーゼ部位があり、そのすべての4個はまた、McrBCハーフサイトでもある。PCR単位複製配列内にHha Iについての4個の制限部位もある。これらのHha I制限部位のすべての4個は、M.ssIおよびM.HhaIの両方についてのメチラーゼ部位であるので、いずれかのメチラーゼでの完全処理は、すべての4個のHha I部位を制限から保護する。McrBCの異なる数のユニットが、まばらにおよび密にメチル化されたDNAの結果を識別することを最良に可能にしうる酵素量を同定するために、前進的により部分的な消化のシリーズを作製するように設定時間(4時間)、用いられた。図8および図9に示されているように、Ct値は、まばらにおよび密にメチル化された配列の両方に用いられたMcrBCの濃度に比例した。図10は、まばらにおよび密にメチル化された配列の間の、その2つを識別しうる分解能を促進するためのMcrBCの異なる量を滴定したことからの結果を実証している。図10において、「1x」は、New England Bioladsにより定義されるMcrBCの0.8ユニットに等しい。
【0160】
密にメチル化された標的は、まばらにメチル化された標的より2.75倍多いメチル化McrBCハーフサイトを有する(11/4=2.75)。それゆえに、McrBCでの処理およびその後の増幅において、2ΔCt=2.75の場合、約1.46の反応のCt間の差を見ることを予想する。ΔCtについて解くと、ΔCt=log(2.75)/log(2)=1.46。本発明者らは、ΔCt(まばら−密@1x McrBC)が1.51±0.05であることを観察した。このように、座のメチル化密度はこの方法を用いて決定された。
【0161】
実施例10:亜硫酸水素塩と連結されたメチル化密度測定
この実施例は、亜硫酸水素塩およびメチル化依存性制限酵素の両方での処理、続いてPCR増幅および増幅産物の定量化により、座のメチル化密度を測定する能力を実証する。
【0162】
DNAの2つの試料、一つはヒト血液細胞から精製され、他方は神経膠腫細胞系から精製されている、が亜硫酸水素塩で処理された。その後、試料は、それぞれ、2つの部分へ分割され、それぞれからの一つの部分は、McrBCで消化され、一方、他方の部分は、偽消化された(すなわち、McrBCで消化されなかった)。メチル化(5mC)は、亜硫酸水素塩変換から保護されるため、すべてのMcrBC部位は、変換されたDNAにおいて無傷の状態のままである。
【0163】
4つの部分のそれぞれから、それぞれ、1 μL、2.5 μLおよび5 μLがPCR増幅のための鋳型として利用され、結果として12個のPCR反応を生じた。鋳型無しの陰性対照および亜硫酸水素塩処理の陽性対照もまた分析された。対象となる座の亜硫酸水素塩変換された配列にアニーリングするように設計されたPCRプライマー、およびPCR試薬が、12個のPCR反応に、ならびに陽性および陰性対照の反応に、用いられた。座のPCR増幅は、限定的であるように決められたサイクル数について行われ、増幅の等量アリコートがアガロースゲル電気泳動で評価された。
【0164】
図14のアガロースゲル画像において「未処理」と付されたレーンは、McrBCで消化されなかった、神経膠腫(左)および血液(右)由来の亜硫酸水素塩変換されたDNAを表す。図14のアガロースゲル画像において「McrBC」と付されたレーンは、McrBCで消化された、神経膠腫(左)および血液(右)由来の亜硫酸水素塩変換されたDNAを表す。McrBC処理は、結果として、両方の試料からのPCR単位複製配列シグナルにおける減少を生じ、両方の試料は、少なくともいくつかの5mCを含むことを示唆した。さらに、McrBC処理された血液アリコートのPCR単位複製配列シグナルは、McrBC処理された神経膠腫アリコートのPCR単位複製配列シグナルより大きく、神経膠腫試料におけるMcrBCの密度は、血液試料におけるMcrBCの密度より大きかったことを示唆した。
【0165】
試料においてメチル化密度を独立して測定するために、亜硫酸水素塩シーケンシングを、亜硫酸水素塩処理された神経膠腫および血液試料から、それぞれ、約10個および30個のクローニングされたPCR単位複製配列について行った。配列分析を行い、各試料について対象となる座における各CpGにおけるメチル化のパーセンテージを表にした。座におけるCpG位置は、図14の上端の線における目盛り線として示されており、図14の二番目の行のグラフは、各試料における各CpGのメチル化密度を示しいている。バー(神経膠腫グラフにおいて赤色、および血液グラフにおいて緑色)は、各CpGがメチル化されているとしてシーケンシングされた(すなわち、それは、亜硫酸水素塩処理、増幅およびクローニングならびにシーケンシング後に「T」よりむしろ「C」としてシーケンシングされた)度数のパーセンテージを示している。亜硫酸水素塩シーケンシングにより測定された絶対的メチル化密度は、神経膠腫細胞において92%、および正常な血液細胞において7%であった。上記の独立した確認およびMcrBCと連結された亜硫酸水素塩PCR結果は一致した。
【0166】
実施例11:メチル化密度測定
この実施例は、メチル化依存性およびメチル化感受性制限酵素の、座における異なるメチル化密度を識別できることを実証する。
【0167】
p16のプロモーターの703 bp部分を増幅した。この部分は、確率論的なメチル化を促進する条件下でのM.SssIを用いて時間経過においてインビトロでメチル化された。この部分は図15に示されている。異なる時点での大規模メチル化反応から、一定容量(20 μl)が取り出され、メチル化反応は熱(65℃)により停止された。本発明者らは、1つの反応をそれが開始する前に停止させた(T=1はメチル化0分であり、すなわち、非メチル化対照;T=2は2分で停止された;T=3は5分で停止された;およびT=4は60分で停止されるが、その時間は反応におけるPCR産物が完全にメチル化されているはずである)。
【0168】
反応物は精製され、各単位複製配列は、その後、TE緩衝液で百万倍希釈より希釈され、正常なコピーバランスに近づくべき比率(すなわち、7.9ピコグラムあたり2コピー)でヒトゲノムへ戻し加えられた。用いられたヒトゲノムは、p16遺伝子の欠失がホモ接合であった。欠失細胞系はCRL-2610である。これは、本発明者らがヒトゲノムの一定量を加えることを可能にした(すなわち、本発明者らの反応においてのゲノムの複雑さに対する制御)。
【0169】
DNA試料は、Aci I(メチル化感受性制限酵素)、McrBC(メチル化依存性制限酵素)、または二重消化として両方で切断され、部分は増幅された。単位複製配列は、MS_p16(207)SYBR greenリアルタイムPCRシステムで検出された。20ナノグラムの入力DNA(ゲノム+単位複製配列)は、〜2764細胞等量/PCR反応あたりに等しい。4つの消化物の各組は、それが4つのチューブへ分配されうるようなBSAおよびGTPを含む制限塩における容量までもたらされた(〜4 μg)。4つの消化物チューブのそれぞれ(〜1 μg)は、2 μlがPCR反応に添加され、それにより20 ngのDNAを添加しうるように、100 μl総量を有する。消化物は、4時間、進行するようにさせておかれ、20分間、熱停止された。PCR条件:

Dynamo MJ qPCR緩衝液、65℃アニーリング、2サイクルPCR(95℃で30 sec、65℃で20 sec)が49回サイクルされ、MJ opticon II定量的PCRシステムでモニターされた。
【0170】
本発明者らは、この方法が密度をモニターしてるならば、以下であるという仮定を立てた。
a)McrBC切断により、T=1についての0ΔCtからT=4(60分間)における最大ΔCtまで進む際の各試料についてのより大きなΔCtを示すはずである。
b)Aci I反応は、正反対の関係を示すはずである。
c)偽処理された消化物および二重消化物は一定の参照点であるはずである。
【0171】
図16に例証されているように、本発明者らは、上で概略を述べられた傾向を観察した。McrBC曲線は、Aci I曲線とは逆に移動し、その動きは、座における増加性メチル化含有量と比例している。未処理の消化物および二重消化物は、アッセイ領域の境界を示す。系は、様々な時限的反応を示す各グラフ表示が異なるように、時間経過に沿って反応のそれぞれの間での差を分解する。プロファイルが破線の閾値線と交差する点は、情報が比較される点を示す。
【0172】
データを視覚化するもう一つの方法は、サイクル閾値における変化(ΔCt)をプロットすることによる。図17を参照されたい。図17は、部分的メチル化反応での各時点において、未処理と比較されたMcrBC処理についてのΔCt、およびAci I消化物についての対応するΔCt(未処理と比較したAci I)を示す。予想されたとおり、McrBCおよびAci I ΔCt線は、交差する逆パターンを与える。Aci Iグラフは、その切断部位は固定されているため、ずんぐりした形を示し、一方、McrBCは、部位認識後の多かれ少なかれ無作為に切断するその能力を反映して、なめらかな連続的分布を示す。切断の頻度は、時間経過に基づいたメチル化占有における予想される変化に比例する。リアルタイム測定に関連した誤差バーが示されている。それらが描出されない場合には、それらはデータ点内にある。
【0173】
実施例12:ゲノムにおいて複数の位置に存在する標的配列のDNAメチル化のモニタリング
この実施例は、モロコシ(Sorghum bicolor)においてカフィリン(kafirin)遺伝子クラスターに繰り返されている配列をモニターするアッセイ法を用いて、一度より多く(すなわち、1コピーより多く)ゲノムに存在する標的配列のメチル化を測定する本方法の能力を実証する。
【0174】
11個のカフィリン遺伝子は、モロコシ(Sorghum bicolor)由来のBACクローンAF527808の公的に利用可能な配列から注釈を付けられた。PCRプライマーは、247 bpの単位複製配列型のすべての11個のカフィリン遺伝子を増幅するように設計された(プライマー配列はすべての11個において保存された)。

【0175】
幼苗葉から単離されたソルガムゲノムDNAは、6つに均等に分割された。6つの部分は、以下の様式で処理された:i)未処理(偽処理)、ii)Hha I消化、iii)McrBC消化、iv)Hha IおよびMcrBC消化、v)Pst I消化、ならびにvi)Pst IおよびMcrBC消化。6つの部分からの等容量のアリコートは、以下の様式で上記のPCRプライマーを用いて増幅された。
【0176】
SYBR greenリアルタイムPCRサイクリングパラメーターは、MJ Research (Boston, MA)からのDynamo Kitを用いて、95℃で3分間、続いて、2段階PCR、95℃で30秒間、56℃で30秒間、の50サイクルである。低温(70℃)および高温(82℃)の両方のプレート読み取りを利用した。ゲノムDNAの投入量は、PCR反応あたり10 ngであった。閾値は、鋳型希釈標準対照を用いて設定された。
【0177】
6つのPCR反応についての動力学的プロファイルは図19に示されている。図19における挿入図は、実験についてのサイクル閾値を設定するために用いられた鋳型希釈標準曲線を図示する。6個の消化物の各組は、3回、実行され、18個の消化物のそれぞれは、4つのPCR複製を有した。PCR反応は、高い再現性があることが測定された。図19において、6個の消化物のそれぞれについてのPCR増幅反応動態は、異なる色で示されている:赤色=偽処理、青色=McrBC消化、オレンジ色=Hha I消化、および緑色=Hha I+McrBC二重消化、ピンク色=Pst I、および空色=Pst I+McrBC二重消化。6個の増幅された消化物のサイクル閾値間の比較がなされ、反復標的配列におけるCNGおよびCGメチル化の密度が決定された。
【0178】
すべての11個のカフィリン遺伝子において、反復標的配列におけるすべてのPst I部位がメチル化され(CNGにおいて)、Pst I処理試料(ピンク色)が偽処理試料(赤色)と同じサイクル閾値(Ct)をもつことから、Pst I消化はブロックされた。この結果は、偽消化DNA対照(赤色)より有意に高いCtをもつMcrBC消化試料(青色)により支持されており、McrBCが切断できたため、CNGメチル化が存在すること、それにより標的配列の無傷コピーの数を低下させることをさらに実証している。二重Pst I+McrBC消化(明るい青色)がMcrBC単独(青色)と同じCtをもつことから、Pst I部位のすべて、またはほとんどすべてはメチル化されている。Pst Iの有無にかかわらずMcrBC消化は同じCtを生じ、一方、McrBCと共のHha I(緑色)は平均してより高いCtを生じることに注目されたい;すべてのHha I部位がメチル化されたとは限らないこと、およびHha Iが標的配列の無傷コピーの数を低下させることができたことを示唆している。これらの結果は、あらゆる標的配列がすべてのPst I部位を網羅する高いCNGメチル化を有し、一方、全部ではないが一部のHha I部位がメチル化されており、標的配列におけるHha I部位の部分的CGメチル化を示していることを示す。各反応の特異性は、融解曲線分析を用いて確認された。
【0179】
カフィリン遺伝子について、McrBC単一消化とHha I+McrBC二重消化の間のCtにおける平均差は、2.46サイクルである(22.08±0.34 Hha I+McrBC−19.62±0.19 McrBC)。本発明者らは、様々な処理にかけられたゲノムDNAのサイクル閾値を比較し、処理により媒介されたCtにおける変化を通してメチル化占有を推測した。任意の座のCtは、アッセイチューブ内に存在するコピー数の関数である。11個の遺伝子のそれぞれは、〜1.5 kb小片へ切断され、コンセンサスカフィリン集合を作成するために整列させられた(図18)。コンセンサスカフィリン配列が調べられ、247 bp単位複製配列を増幅するPCRプライマーが選択された(上記参照)。
【0180】
CGメチル化に関して、Hha I消化(オレンジ色)試料は、偽処理対照(赤色)と同じCtをもつ;しかしながら、Hha I+McrBC二重消化(緑色)は、McrBC単独(青色)より2.46サイクル大きいCtをもち、一部のHha I部位が修飾されているはずがないことを示している。2.46のサイクル閾値差は、Hha I+McrBC二重消化試料において、22.46、すなわち約5.5分の1のDNAがあることを示す。これは、11個のカフィリン遺伝子のうちの2個が一部の非メチル化Hha I部位を有することを示唆している。
【0181】
反復標的配列におけるメチル化の存在を独立して確認するために、1xソルガム配列が、メチルでフィルタリングされたソルガムゲノムから作製された(米国特許公開第20010046669号、Bedell et al., PLOS印刷中、参照)。ソルガムゲノムにおける遺伝子の95%は、メチルでフィルタリングされた配列セットに表されていることが決定された。しかしながら、カフィリン遺伝子クラスターにおいて、BACクローンAF527808由来の11個の遺伝子のうちのたった2個だけが、メチルでフィルタリングされた配列セットに表され、それらの大部分または全部がメチル化されている可能性があり、それゆえに、メチルでフィルタリングされた配列において実際以下に表されている。遺伝子のうちの10個は、クラスターにおいて縦に整列しており、平均99.1%配列同一性を共有し、一方、11番目の遺伝子は、45 kb離れて位置し、より分岐している(平均して76.2%同一性)。247 bp領域が、すべての11個の遺伝子に渡るその近い同一性のために、および高いCGおよびCNG含有量のために、5'末端の近くにPCRのために選択された(図18参照)。標的配列におけるメチル化の独立した確認は、増幅された消化DNAの反応動態の分析によりなされたメチル化測定と一致した。
【0182】
上記実施例は、本発明を例証するために提供され、その範囲を限定するためではない。本発明の他の変形は、当業者にとって容易に明らかであると思われ、添付された特許請求の範囲により含まれる。本明細書に引用されるすべての刊行物、データベースおよび特許は、参照により本明細書に組み入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】異なるメチル化:非メチル化の希釈度におけるDNAの増幅の結果を示す。
【図2】異なるメチル化:非メチル化の希釈度におけるDNA間を識別するMcrBCの能力を示す。図の下部における矢印は、Hha I切断とHha I/McrBC二重切断の試料間のおよそのΔCtを示す。
【図3】1:2000のメチル化:非メチル化の希釈度におけるDNAの分析を示す。
【図4】メチル化/非メチル化DNAの希釈度の関数としてサイクル閾値における変化のプロットを示す。
【図5】異なるメチル化:非メチル化の希釈度の結果を示す。
【図6】疾患の発生における仮想的メチル化密度進行を示す。
【図7】McrBC DNA制限を示す。
【図8】まばらにメチル化されたDNAを制限する異なるMcrBC希釈度からの増幅結果を示す。
【図9】密にメチル化されたDNAを制限する異なるMcrBC希釈度からの増幅結果を示す。
【図10】異なる制限酵素希釈度を用いて、異なるメチル化密度をもつDNA間の最適な分解能を決定することを示す。
【図11】特定のヌクレオチドのみのメチル化状態が仮想的疾患進行において検出される場合、何のデータが得られるかを示す。
【図12】座の平均メチル化密度が仮想的疾患進行において検出される場合、何のデータが得られるのかを示す。
【図13】DNAメチル化の追加の分析を提供するために異なる制限酵素消化の比較を示す。
【図14】McrBC/増幅に基づいたメチル化検出の分析および亜硫酸水素塩シーケンシングとの比較を示す。データは、亜硫酸水素塩処理、McrBC消化、およびその後の増幅を用いて作成された。
【図15】M.Sss Iでインビトロでメチル化されたp16プロモーターの部分を示す。
【図16】メチル化依存性(すなわち、McrBC)およびメチル化感受性(すなわち、Aci I)制限酵素がDNA座における異なるメチル化密度を識別することを実証するデータを示す。
【図17】メチル化依存性(すなわち、McrBC)およびメチル化感受性(すなわち、Aci I)制限酵素がDNA座における異なるメチル化密度を識別することを実証するサイクル閾値データを示す。
【図18】カフィリン遺伝子のコンセンサス制限地図を示す。関連した制限部位は、垂直に示され、数は、塩基対での距離目盛を示す。各コード配列は、青色の影の付いた矢印として示され、アッセイされる領域は、黒色バーにより示されている。円は、あらゆるカフィリン遺伝子に存在するというわけではない部位を示し、色は、その部位を共有しない遺伝子の数を表す。オレンジ色の円(最も5'側のHha I部位)は、11個のカフィリン遺伝子のうちの9個において保存されており、赤色(最も3'側のPst I部位)は、11個のうちの10個において存在する。
【図19】11個のカフィリン遺伝子の不均一なCGメチル化および均一なCNGメチル化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、ゲノムDNAの座における平均メチル化密度を定量化するための方法:
ゲノムDNAをメチル化依存性制限酵素またはメチル化感受性制限酵素と、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で接触させる段階;
座の無傷コピーを定量化する段階;および
増幅産物の量を、対照DNAのメチル化の量を表す対照値と比較し、それにより、対照DNAのメチル化密度と比較した座における平均メチル化密度を定量化する段階。
【請求項2】
定量化段階が定量的増幅を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
増幅産物の量が標準曲線と比較される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
増幅段階が、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、座に隣接するDNAに、プライマー間のゲノムDNAの切断されていない座に対応する増幅産物を生じるようにハイブリダイズさせる段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
対照値が、既知のまたは予想される数のメチル化ヌクレオチドを有するDNA試料の増幅産物の量を表す、請求項1記載の方法。
【請求項6】
制限酵素がメチル化感受性制限酵素である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
メチル化感受性制限酵素が、Aat II、Aci I、Acl I、Age I、Alu I、Asc I、Ase I、AsiS I、Bbe I、BsaA I、BsaH I、BsiE I、BsiW I、BsrF I、BssH II、BssK I、BstB I、BstN I、BstU I、Cla I、Eae I、Eag I、Fau I、Fse I、Hha I、HinP1 I、HinC II、Hpa II、Hpy99 I、HpyCH4 IV、Kas I、Mlu I、MapA1 I、Msp I、Nae I、Nar I、Not I、Pml I、Pst I、Pvu I、Rsr II、Sac II、Sap I、Sau3A I、Sfl I、Sfo I、SgrA I、Sma I、SnaB I、Tsc I、Xma IおよびZra Iからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
制限酵素がメチル化依存性制限酵素である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
制限酵素がメチル-シトシン依存性制限酵素である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
制限酵素がMcrBC、McrA、またはMrrAである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
制限酵素がメチル-アデノシン依存性制限酵素である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
制限酵素がDpn Iである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
メチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素が、部分の部分的消化のみを可能にする条件下で部分と接触させられる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
以下の段階を含む、請求項1記載の方法:
ゲノムDNAを少なくとも2つの等しい部分へ分割する段階;
1つの部分をメチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素と接触させ、かつ第二部分をその制限酵素のアイソシゾマーのパートナーと接触させる段階;
2つのオリゴヌクレオチドプライマーを座に隣接するDNAにハイブリダイズさせる段階を含む段階において、各部分においてゲノムDNAの座を増幅する段階;
増幅産物を定量化する段階;および
2つの部分からの増幅産物の量を比較する段階。
【請求項15】
ゲノムDNAを、増幅段階の前に、非メチル化シトシンを修飾する作用物質と接触させる段階をさらに含み、かつ2つのオリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つがゲノムDNAにおいて修飾された非メチル化とメチル化のDNAの間を識別する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
ゲノムDNAが、非メチル化シトシンを修飾する作用物質と接触させられる前に、DNAを、少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素またはメチル化感受性制限酵素と接触させる段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
ゲノムDNAが少なくとも2つの異なるメチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素の混合物と接触させられる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
作用物質が亜硫酸水素ナトリウムである、請求項15記載の方法。
【請求項19】
増幅産物が定量的PCRを用いて定量化される、請求項2記載の方法。
【請求項20】
対照値が、対照座を含むDNAをメチル化依存性またはメチル化感受性制限酵素と接触させる段階;対照座を増幅する段階;および増幅産物の量を測定する段階により作成される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
対照座が、既知のものである、またはメチル化されていないと予想される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
対照値が、既知の数のメチル化ヌクレオチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
対象において癌細胞の有無を検出するために行われる、請求項1記載の方法。
【請求項24】
定量化段階が増幅産物にハイブリダイズするプローブを検出する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
プローブが検出可能な蛍光部分を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
DNAが動物由来である、請求項1記載の方法。
【請求項27】
動物がヒトである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
ゲノムDNAが、植物、真菌および細菌からなる群より選択される生物体由来である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
以下の段階を含む、DNA試料において標的座についての相対的メチル化密度を計算する方法:
i. DNA試料をメチル化依存性制限酵素と、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で接触させて、座の少なくとも一部のメチル化コピーが断片化されている核酸の集団を得る段階、またはDNA試料をメチル化感受性制限酵素と、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で接触させて、座の少なくとも一部の非メチル化コピーが断片化されている核酸の集団を得る段階;
ii. 接触段階後、DNA試料において座の無傷コピーを定量的に増幅する段階;
iii. DNA試料からの増幅された部分についてサイクル閾値(Ct)を同定する段階;および
iv. DNA試料のCtと対照Ct値の間の差(ΔCt)を計算することにより標的座についての相対的メチル化密度を決定する段階であって、2|ΔCt|が、DNA試料と対照の間の相対的メチル化密度に比例する、段階。
【請求項30】
対照Ctが以下の段階を含む段階により計算される、請求項29記載の方法:
i. 対照DNA試料をメチル化依存性制限酵素と、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で接触させて、座の少なくとも一部のメチル化コピーが断片化されている核酸の集団を得る段階、または対照DNA試料をメチル化感受性制限酵素と、座における可能性のある制限酵素切断部位の少なくとも一部のコピーが切断されない状態のままであることを可能にする条件下で接触させて、座の少なくとも一部の非メチル化コピーが断片化されている核酸の集団を得る段階;
ii. 接触段階後、対照DNA試料において座の無傷コピーを増幅する段階;および
iii. 対照DNA試料からの増幅された部分についてサイクル閾値(Ct)を同定する段階。
【請求項31】
増幅段階が、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、座に隣接するDNAに、プライマー間のゲノムDNAの切断されていない座に対応する増幅産物を生じるようにハイブリダイズさせる段階を含む、請求項29記載の方法。
【請求項32】
メチル化感受性制限酵素が、Aat II、Acl I、Age I、Alu I、Asc I、Ase I、AsiS I、Bbe I、BsaA I、BsaH I、BsiE I、BsiW I、BsrF I、BssH II、BssK I、BstB I、BstN I、BstU I、Cla I、Eae I、Eag I、Fau I、Fse I、Hha I、HinP1 I、HinC II、Hpa II、Hpy99 I、HpyCH4 IV、Kas I、Mlu I、MapA1 I、Msp I、Nae I、Nar I、Not I、Pml I、Pst I、Pvu I、Rsr II、Sac II、Sap I、Sau3A I、Sfl I、Sfo I、SgrA I、Sma I、SnaB I、Tsc I、Xma IおよびZra Iからなる群より選択される、請求項29記載の方法。
【請求項33】
制限酵素がメチル化依存性制限酵素である、請求項29記載の方法。
【請求項34】
制限酵素がメチル-シトシン依存性制限酵素である、請求項29記載の方法。
【請求項35】
制限酵素がMcrBC、McrA、またはMrrAである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
制限酵素がメチル-アデノシン依存性制限酵素である、請求項1記載の方法。
【請求項37】
制限酵素がDpn Iである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
メチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素が、部分の部分的消化のみを可能にする条件下で部分と接触させられる、請求項29記載の方法。
【請求項39】
以下のものを含む、ゲノムDNAの座における平均メチル化密度を定量化するためのキット:
メチル化依存性制限酵素またはメチル化感受性制限酵素;
あらかじめ決められた数のメチル化ヌクレオチドを含む対照DNA分子;および
対照DNA分子にハイブリダイズする対照オリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項40】
制限酵素がメチル化感受性制限酵素である、請求項39記載のキット。
【請求項41】
制限酵素がメチル化依存性制限酵素である、請求項39記載のキット。
【請求項42】
制限酵素がメチル-シトシン依存性制限酵素である、請求項39記載のキット。
【請求項43】
制限酵素がMcrBC、McrA、またはMrrAである、請求項39記載のキット。
【請求項44】
ゲノムDNAのあらかじめ決められた座にハイブリダイズする標的オリゴヌクレオチドプライマーをさらに含む、請求項39記載のキット。
【請求項45】
少なくとも1つの標的オリゴヌクレオチドプライマーが、ヒトゲノムDNAにおいて修飾された非メチル化とメチル化のDNAの間を識別する、請求項39記載のキット。
【請求項46】
異なるあらかじめ決められた数のメチル化ヌクレオチドを含む複数のDNA分子を含む、請求項39記載のキット。
【請求項47】
制限酵素の活性を維持するのに十分な試薬をさらに含む、請求項39記載のキット。
【請求項48】
耐熱性DNAポリメラーゼをさらに含む、請求項39記載のキット。
【請求項49】
非メチル化シトシンを修飾する作用物質をさらに含む、請求項39記載のキット。
【請求項50】
検出可能に標識されたオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項39記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2007−522795(P2007−522795A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536855(P2006−536855)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/035177
【国際公開番号】WO2005/040399
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506137468)オリオン ゲノミクス エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】